「今日俺が作っていい?」
「いいよ。私何か手伝おうか」
「んー、じゃあ話し相手してくれるか」
「え。話し相手でいいの?」
「いいの」

鉢屋三郎はキッチンで料理をし始め、私はいつも座ってるリビングの椅子に腰掛けた。向かい合わせになるからせっせと動く鉢屋三郎の姿がよく見える。でも鉢屋三郎は料理をしなければいけないから目が合うことはない。そのためか今の私には多少の余裕がありガン見だったらしい。鉢屋三郎からそんなに見んなと言われてしまった。思いっきりばればれでした。

平日だと鉢屋三郎には部活がある。だから殆ど私が夕飯を作る。朝も早いし夜も練習ばかりの鉢屋三郎とは真逆で、帰宅部の私は暇人。アルバイトを入れた日はちゃちゃっと出来るものしか作れないけど有り難いことに鉢屋三郎が手伝ってくれるから問題ない。ちなみに今日は平日なんだけど部活が休みらしい。部活より早い帰りののち鉢屋三郎が率先してキッチンに立ち今現在に至る。


何作ってくれるんだろ。ひとり待ちぼうけでありながら楽しみで仕方ない。足をパタパタしているとふいに名前を呼ばれた。


「なまえは部活やらないのか?」
「…うーん。二年生からやるっていうのは足を引っ張りそうだしね。なにかやるつもりはないかなぁ」
「マネとかは」
「え?…あ、マネージャーのこと?」
「バスケのやってみないか?あいつら人目当てとかで入ってくるから困るんだよな」

まさかバスケのマネージャーに勧誘されるとは思わなかった。まあそれほどそういう類いのことが嫌なんだろうなと私が見てとれるほどにわかった。できれば協力でもしてあげれたらと思う。だがしかし、無理だ。

「やだよ怖い。女の子達からブーイング貰っちゃうよ。それ怖い」
「そんなにいうほどか?」

うん無理。私には出来ない。
鉢屋三郎の「えー」という残念そうな声がするけど致し方ない。これ以上学校で関わると面倒なことになりそう…というか絶対なる。だからここは遠慮させて頂くことにしよう。

「本当にいいのか?」
「うん。私としてはマネとか部活やるより、家にいた方が何かと都合がいいし」

夕飯でも何でも。バイト以外、特にやりたいものはないから私は帰宅部で構わないと思ってる。それに友達と遊ぶ時間もできるしさ。そういうと鉢屋三郎は少し間を開けて一度頷いた。


「…まあ、なまえが言うなら問題ないか」
「えっ?」
「いや、…」

鉢屋三郎の呟きに聞き返したけど、なんでもないと言われた。もしかして…、いや、もしかしなくても鉢屋三郎は。

「心配してくれてたんだ?」

一言答えればふとこちらを向いた。
きっとそうだ。鉢屋三郎は自分が部活をしているのに、私がしていないのを気にしてくれていたのかもしれない。

「私、我慢してないよ。部活やりたいけど出来ないっていうわけじゃないから大丈夫。三郎は普通に部活やっててよ。ありがとう」

いつも鉢屋三郎が私の考えていることを当ててくるばかりだからこの流れはなんだか新鮮だ。少し、理解できているのかな。彼の性格。そうだったら嬉しいかなぁ。



「あー…ほら、もう出来るぞ飯。スプーン用意してくれないか。あとそこにサラダ置いとくから持ってって」
「う、うんわかった」

あからさまに話が変わった。まあでも照れ隠しっぽいように見えましたので弄るのはやめておきます。こういうの言われるのが苦手なんだろうか。
鉢屋三郎に言われた通り準備をして、あとはじっと待っていると、それはもう見事な出来栄えの料理が出てきた。

「オムライス!!」

しかもふわっふわなたまご!お店に出てきそう!なにこれ凄いんだけど!!

「な、なんでこんなフワフワにできるの」
「今は料理男子だろ?」
「マジですか!」

そんな男子知らなかった。
二人でいただきますをしてふわっふわなたまごにスプーンを入れる。うわあああ

「おいしい!」
「そりゃよかった」

味だって美味しくて完璧。何でもそつなくこなす鉢屋三郎おそるべし。家事とか変わってほしい。
…いやいやいやさっきあれだけ言っておいてそんなこと思ってちゃダメじゃん私。これからレベルアップすればいいんだから焦るな私。今度は肉々しい料理じゃなくてオシャレな料理を作ろう。そうしよう。
女として負けてられない。そんな対抗心を燃やしているとふいに鉢屋三郎が笑った。



「俺はなまえの料理の方が好きだけどな」
「ゴホッ」
「うわっ飛ばすなって!」

ば、ばかやろう!こんな腕前あってそんなわけないじゃないか!



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