教室を出て帰っていくみょうじさんとその友達の姿を神妙な顔つきで見送った三郎。…いや、正確にはみょうじさんが原因だろうか。彼女のアルバイトの話を聞いたときから三郎のようすが少しおかしかった。

「どうしたのさ三郎」
「いや……」
「…気になるの?みょうじさんのこと」
「……」

僕が聞いても三郎はなんでもないと首を横に振るばかりで何も言おうとはしない。教えてくれない。でも、少し、だけ。少しだけなんだけど実は気になってることがあるんだ。

「なんだかみょうじさんと三郎って仲良いよね」
「……そうか?」
「うん。僕はそう思うよ」

三郎がとてもモテるのは周知の上。女の子から黄色い声が上がったりするのはよくあること。ウザいとかってよく愚痴を零すことだってあるけどそれでも当たり障りのないよう接してる。つくろう笑顔に人間関係はとても良好なはずだ。でも、そこで一線を引いてるのを僕は知ってる。ハチも兵助も勘右衛門だって知ってる。三郎はその一線を越えさせない。踏み入れることを許さない。他人に気を許さない。それが三郎なのだ。

なのにどうしてだろう。彼女に対するときだけ、ちょっと違う。それをなんて言えばいいのかわからないしどう表現すればいいのか難しいけど僕はそう感じるんだ。


「みょうじさ、前にバイトが癖だって言ってた気がするなぁ」
「癖?」

アルバイトがクセと言われればふと後輩を思い出してしまったのは置いておくとして。「今考えりゃ部活やってないのもバイトやってるからだな!」と結論付けたハチが笑う。みょうじさんとアルバイトを関連づけると思い出す話がチラホラ出てくるみたいで、その話を三郎がじっと聞いてる。
これはハチにだってわからないだろうけど僕にはわかる。三郎ったら澄ました顔して結構真剣に聞いてるんだもの。よほどみょうじさんが気になるんだろうね。

いつからだろう。三郎がみょうじさんを見ていたのは。少なくとも、…ふふ。二年生になる以前から気にかけていたよね。

どうしてかまでは知らないし気になることは多々あるけれど。みょうじさんってとてもいい子なんだと思う。それに三郎が気にかけているくらいだもの。
三郎が、とかっていう理由だけじゃなくて。二年生になって同じクラスになってこうして話す機会が出来たのだから。だから僕ももっとみょうじさんと仲良くなれたらいいなぁと思うんだ。



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