「どういう関係なわけ?」
「…ど、どういうと言われましても」

ガン、と壁に蹴りを入れて私を見る女性陣。名前も知らないし先輩か同級生なのか後輩なのかもわからない。ねえねえちょっと、と声をかけられて何の疑いもなく着いて行った結果がこれだ。なんだこれは。もう一度言おう、なんだこれは。

「はぐらかすなよ」

……。あの時の声は一体何処へ。もうね、どうしたものかと。私ゴミ当番で焼却炉に行かなきゃいかんのです。ゴミだけ捨てさせて欲しい。だけどそんなこと言える勇気なんてない私は聞いているわけです。内容は鉢屋三郎との関係について。最悪だ

「で?好きなの?」
「え、…いや好きっていうか」

彼、と今、家族だし。好きか嫌いかの二択だったならそりゃあ好きだけど、それを彼女達に言ったら誤解を招きそうだし。友達と言えればいいけど友達って言ってもいいのかわからないからそれも言えず。曖昧にするしかない。そうしたら喧嘩売ってんの?なんて聞かれてもう。もうね。

「もう話さないでくれるかな」
「喧嘩売るとかそんなつもりはないんです。ただクラスメイトだし話をするなってのは無理かな、と」
「鉢屋君を本気で好きな子がいるのに、鉢屋君を好きでもないあんたが、邪魔してるのよ」
「………」
「そんなこともわかんないの?」

呆れた目。蔑んだ目。たくさんの目ん玉が私をみる。正直やめてほしい。そんなことを言われたって私にどうしろと。意味がわからない。誰でもいいから助けてくれ。

どう返そうにも結局はダメなんだろうなぁ、なんて考えてはため息をつきそうになった。いかんいかんこれじゃまた逆鱗に触れてしまう。
うーんどうしたものか。と言葉を聞き流しながら逃げ道を探している時だった



「お前達、一人相手に寄ってたかってどうした」

囲われた先に見えた、一人の男。それを見た先輩達が目を丸くし声を漏らす。

「た…たた立花君…っ!?」

たたたたちばなくん?
そう呼ばれた人はすたすたとこちらへ向かって来る。それはもう爽やかな笑みを浮かべて。

「違うのよ、これ、ただの集会みたいなものだから」

にこりと微笑みを振り撒きながら対応する。なのにそんなことには目もくれず、この人は私を見る。え、と…誰、だっけ?どこかでみたことがある気がするんだけど…。あ、そうだ。全校集会で挨拶をしていた人のような。


「違うとは?ふむ。何の為の集まりかはあえて聞かないが、……私はこいつに用があるんだ。中々来ないから来たんだが少々借りてもいいか」
「え?あ、も、もちろんいいよ。用もすんだし。私達も行こっか〜」

すれば彼女らはすたすたとこの場を離れてく。フラグが中途半端に終わってしまいどうすればいいのかわからない。誰か助けてくれとは思ったけどまさかのまさか一つ上の立花先輩が現れるとは思いもしなかった。そう、この先輩は今年度の風紀委員会委員長であり、高等部一美しいと云われてる人ゆえ有名だったりする。…髪の毛がサラサラで顔立ちも良くて本当に綺麗な人だよ。女やめたい。


「今時こんな古典的なことをする阿呆な女共がいるんだな」
「エッ…」

思わず聞き返しそうになったのをぐっと堪え立花先輩を見上げた。平然と言ってのける先輩はとても清々しく、優しそうな外見とは似つかないような言葉を吐いた。き…聞き違いだろうか…?

……いやいやそんなことより聞き違いじゃなければ先輩は私に用があると言っていなかったか?な、何かしたかな私。

「別に用はない」
「あ、そうですか…」

まるでエスパーだった。どうやらあの集まりを不審に思った為声をかけてくれたらしい。よかったこれで焼却炉に向かえる。ゴミを捨てられるよ。そんな意味も込めてお礼を言わなければいけないね。

「あの、いろいろとすみま」
「助けようと思ったわけじゃない。偶然通り掛かっただけだから気にするな」
「はあ…」

それでも救われたのは事実。礼はさせてくれないようすだったから軽く頭を下げるだけにしておく。そんな私に見向きもせずこの場を離れてく背中をぼけっと見ていれば、ふとこちらを向き告げた。

「私としては楽しいものを見させてもらった。まったく女の恋路というものは恐ろしいものだ」

た、立花先輩。知らないとか言っていましたけど、あなたほんとは全部聞いてたんじゃ…



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