1.同類




降り頻る雨の中、ソーマは重い剣を持ったまま歩いていた。

標的のヴァジュラは狩った。
偵察隊の話では、ヴァジュラの傍に少女が居たという。
近辺で見つからなければ喰われただろうと思われるが、一周り見てから帰ってくるようにと言われている。

普段乾いていて、風がふけば砂埃が立つような場所。
もとは教会か何かだったのだろうが、破壊されて見る影も無い。
しかし、どこか神秘的な空間だけは、僅かに残っている。

そんな中、崩れ落ちた屋根の残骸の上。
建物の中とはいえ濡れるところに「ソレ」はいた。

白く血の気のない肌。
切っていないのか、伸びっぱなしの琥珀色の髪の毛。
着込んでいるのはヴァジュラのマントで、まるでヴァジュラが人になったかのような異形さだった。

「・・・おい」

「・・・」

かけられた声に、少女は膝に埋めていた顔を上げた。
睫毛から雨水が滴る。
霞んだ暗い琥珀色の瞳がソーマを捉えた。

「だれ?」

「お前こそ誰だ」

「・・・ことばおなじ」

「?」

「きっと、なかま」

「・・・」

「"おとうさん"のにおい」

「お父さん?」

「けがのにおい…だいじょうぶ?」

「・・・先ずは自分の心配をしろ」

「やさしい、だね」

そう言って屈託無く笑った少女は衰弱してたのだろう。
そのまま意識を失い、瓦礫を滑り落ちて濡れた地面にその身を賦した。
ソーマが駆け寄って助け起こす。

「おい、・・・」

ヴァジュラのような見た目から、もっとしっかりしていると思っていた。
髪で見えなかったのもあったのだろう。
助け起こした体は細く痩せていて、先ほどまでこちらを見ていた瞳のような儚さだった。
薄く開いた口元から、人にしては鋭い犬歯が覗いていて、それだけが無理に己の強さを主張しようとしているようだった。

「チッ…」

揺すったり、軽くだとしても叩きでもしたら折れてしまいそうだった。
ソーマは溜め息をついて、自分より小さいそれを肩に担いだ。
ポケットから無線機を取り出してスイッチを押す。

「こちらソーマ。目標確保」

『おっ、居たのか?了解。全員帰るぞー』

一緒に任務に来ていたリンドウが無線に応える。
合流してアナグラへ向かった。

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