0.プロローグ




少女が座っている。
見下ろすのは巨大な獅子だ。
空は黒い雲が覆い、雷さえ帯びている。

「どこ、いく?」

少女が綺麗な声で問う。
それに、稲妻の轟くような声が応えた。
獣の唸る声。

『ちょっと出かけてくるだけだ』

「どうして、いつもみたい、いっしょ、だめ?」

『今日は、お留守番だ』

「おるす、ばん?」

『ここで待つんだ。いいな?』

「・・・まつ?」

『何かあっても動いてはいけない』

「・・・わかった」

『じゃあ、行ってくる』

「はやく、かえってね」




---おとうさん。



いつの間にか降りだした雨が、低い少女の体温をさらに奪った。

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