キャバッローネの本邸。
テーブルを挟んでディーノと9代目が座る。
9代目の指示とも計らいともつかぬ発言で、梟はディーノの脇に座っていた。

「…この子がヴァリアーに入った身元不明の子供、ねぇ」

「・・・」

「9代目、この子は始終これなんですか?」

「まぁ、そうだね」

ディーノはふーん、と生返事しながら、梟の頬をつついた。
子供だからこその柔らかさ。

「・・・」

「いでっ」

が、ぺしっと小さな手ではらわれる。
無表情なので何を思ってはらったのか分からない。
照れたのか、普通に嫌なのか。

「そうだ。9代目、この子にお菓子あげても別にいいですよね?」

「構わんが?」

「んじゃ、ロマーリオ、ケーキあっただろ。こいつに出してやってくれ」

「はいはい」

やり取りを訝しげな表情で見る梟。

「甘いもの、嫌いか?」

「・・・別に」

「ケーキ好きだろ?」

「・・・」

梟は一度視線をそらしてから、ぼそりと。

「知らない」

「え・・・食った事ないのか?」

少しむすっとして頷いた。
この子可愛い。

「まぁ食ってみて、気に入らなきゃやめればいい」

「・・・ん」

小さく頷いて、持ってこられた冷えたケーキを見る。
どこか睨んでいるように見えるのは気の所為か?

「大丈夫だって、なんなら食わせてやろうか?」

「いい」

ぶんぶん首をふる。
やっぱこいつ、可愛い。

「・・・」

もぐもぐもぐ。

租借しながら、目の色がちょっとずつ変わる。
こう、無表情から、ちょっとキラキラした感じになる。
むぐむぐと膨れた頬がちょっと赤くなる。

「美味いか?」

「・・・美味しい」

「そりゃ良かった」

思わず顔が緩む。
妹とか、娘とか居たらこんな気分なんだろうか?
頭を撫でてやると、今度は手を払わず、気持ちよさ気に目を細めた。
猫みたいだ。

「梟」

呼ばれて、不思議そうに顔を上げる。
頭をなでていた手を下げて肩に乗せた。

「ヴァリアーじゃなくてウチに来ないか?」

「・・・やめとく」

梟は言いながらディーノの手をのけた。
何故?と聞いても、梟は答えなかった。

「・・・9代目」

「ん?」

「言わないつもりだったけど、お礼も兼ねて」

真剣な顔で話し始めた梟。
もともと無表情だから、睨んでいるようにも見えてしまうのだが。

「近く、ボンゴレ本邸が襲われる可能性が出てきた」

「ほう」

「不確定だから、どこがいつやるとは言わないけど、気をつけておいて損はないわ」

「いや、ありがとう」

9代目の笑顔に梟がだじろいたのが分かった。
もう一度頭をなでた。
梟がまたはらおうとしたので、ケーキもう一個食うか?と問えば、少し考えてから小さく頷いた。
やっぱり可愛いと思う。

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