「ルッスーリア、何?そいつ」

今日も普通に仕事して、普通に帰ってきて、一応書類を書いた。
血がついてても知ーらね。
そんでボスの部屋に行ったら、ルッスーリアが変なチビを連れてた。
ボスに書類を出して、一緒に部屋を出ながら聞いた。

「それがね、仕事してるのを見られちゃったから始末しようとしたらすばしっこくて!
すばしっこいって言うより、そうねぇ、技が当たらないのよぉ。
それが面白くてね、何もしないから付いておいでって連れて来たのよー」

「ししし、お前こんなチビに追いつけないの?遅くね?」

「やってみれば分かるわよ!」

「ふーん・・・お前名前は?」

「・・・・・」

「名乗らない所か全然話さないのよぉ。困っちゃうわぁ〜
一応頷いたり首振ったりはするんだけどね・・・」

なにそれ、ちょー生意気。

「だから何か付けようと思うのよ、何が良いかしら?」

「しらね」

俺が不機嫌に返すとルッスーリアは連れなぁーい!とか言ってクネる。めっちゃキモイ。死ねよオカマ。
俺はそれを無視して、ボロボロのチビ女を見た。
東洋人・・・?
あっちの奴らって若く見えるって言うよなぁ。じゃあ俺と同じくらい?

「とりあえずさぁ」

「何?ベルちゃん」

「名前の前にこいつ着替えさせたら?」

ルッスーリアがしまったと言う顔をした。
普段は細かい事を気にするくせに、こういう時気付かねーんじゃ意味ねーじゃん。


・・・


「で、何で俺まで一緒に来なきゃなんねーんだよ?」

「そう言わないの!ボスも年が近いから面倒見させろって言ったんだから」

うーわ何それ?聞いてないんだけど。
ルッスーリアは新しいヴァリアーの隊服を取りに行った。ご機嫌だ。機嫌良すぎて気持ち悪い。いつもだけど。

俺はぼーっと立っているチビ女を見る。
もともとはそれなりの服だったんだろうに、ボロボロだ。
オカマの仕事で汚れたのか、自分で汚したのか、誰かにやられたのか…。

「しし・・・お前あのオカマに着せかえ人形にされるぜ?」

「別に・・・」

話せるんなら最初から話せよ。何だこいつ!
・・・ムカつく。

そうこうしていたらオカマが帰ってきた。鼻歌まで歌って、尚更腹立たしい。
ルッスーリアはチビに服をつき合わせている。
一番小さいサイズでも大きいくらいだ。本当にチビだな。

「これ、要らない。動きづらそう」

チビはルッスーリアにズボンとシャツを突き返した。
お前それじゃ寒ぃじゃん。つーかコートだけじゃん!
俺が突っ込むくらいだからカマが黙っている筈がない。文句たらたらだ。
しかしチビ女は聞く気は更々ないらしく、コートを持ち上げて眺めている。

「フードつきがいい。あと、シャワー。」

どんだけワガママだよお前。
そういうのって俺みたいな王子なら許されるだろーけどさ。
今来たばっかの癖に、生意気にも程があんだろ。



シャワーを浴びて着替え、泥や血で分かりづらかった顔がよく見えるようになって戻ってきたチビ女は、案外ふつうの奴だった。
普通っていうのは、まぁ見た目的に。
ブサイクってわけでもないし、そんなにズバ抜けて美人ってわけでもない。
まぁ、普通よりは整っているんだろう・・・とは思うけど。
黄色人種のわりに肌が白い。
すっげー無表情だから、実は陶器の人形じゃないかと思った。
もともと履いていたブーツは何かで切れていたので、裸足。
ヴァリアーのコートは、ブカブカなだけあってスカートみたいになっている。
ふと手元を見ると、何か薄っぺらい刃物の束をジャラジャラいわせて下げていた。

「お前のソレ、何?」

「・・・・・・スライサー?」

自分でもハッキリ何という事を考えて持っている訳ではないらしい。
どこか虚ろな目で自分の手の中の刃物を見て、首を傾げた。

「お前そんなもん、どっから仕入れたんだよ」

「・・・・・・・・・・・・」

またダンマリかよ!

「なぁそいつやっぱ危なくね?」

チビが視線を上げて、じっと俺を見る。
攻撃して来るのか警戒しているんだろう。
刃物を持つ手に少し力がこもったのが見えた。

「ボスが置くって決めたのよ。それにワタシ達、危ないの好きじゃない?」

「ししし・・・まーね!よし、おいチビ。お前、何かやったら俺が殺してやるからな」

俺が笑うと、チビはそれまで無表情だった顔で、少し口をへの字にして俺を睨んだ。
良いじゃん、無表情よりそっち方が。

「で、ルッスーリア、こいつの名前決まった?」

「んー、梟、とかどうかしら?」

「・・・・・・」

「うしし…良いじゃん。王子好きだぜ、ソレ」

チビ女、もとい梟が反応しないので、勝手に決定した。
いーじゃん別に?だってオレ王子だもん!

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