3.身形
「サクヤ、だ」
「よろしくね」
「さくやー」
おうるがそのまま寝入ってしまったため、翌日再び訪れたリンドウ。
今度はソーマではなく、サクヤを連れてだ。
リンドウが紹介すると、きょとんとしたまま復唱した。
「ふーん。これがヴァジュラと一緒に居たっていう女の子ね」
「?」
それから、救急箱の補充の為にやってきたジーナ。
偶然鉢合わせたのだが…
「・・・可愛いわね」
「かわいー?」
おうるが気に入ったらしく頭を撫でている。
「ジーナ・ディキンソンよ。ジーナでいいわ」
「じーな!かわいーな」
「はいはい」
撫でられるのが気に入ったのか、ベッドで丸くなってじっとしているおうる。
むしろウトウトしてしまっている。
「これ、シュンやエリックが見たら変に騒ぎそうね」
ジーナが撫でる手をそのままにリンドウを見た。
「と言うと?」
「あの人たち、馬鹿にしたりするの好きでしょ」
「あぁ・・・」
「ばかー・・・?」
「何でもないわ」
「・・・うそ、よくないー」
ジト目になるおうるに、サクヤも髪を撫でながら笑いかける。
「おうるが心配することじゃないわ」
「・・・むずかしい?」
仏頂面になってしまったおうるを見て、サクヤは苦笑した。
「それで、この子の髪と服をなんとかするんだったわね?」
「かみー?ふくー」
「切るのかい?じゃあその髪、貰えるかな?」
突然後ろからかかった声に、サクヤとリンドウが飛び上がった。
おうるががばっと飛び起きてジーナの後ろに隠れる。
「きゃっ!」
「おぉっ?!」
「まずそうなの!!!」
「はぁ?おうる、何の話?」
「不味そうなのじゃなくて、榊だよ」
ドアのところに、榊とソーマが立っていた。
「そーま!おいしいのある?」
「・・・ない」
「ないー・・・」
あからさまにしょぼんと耳を垂れる。
それを見て、ソーマは舌打ちしてリンドウを睨むように見た。
「・・・リンドウ」
「飴のことか?まだあるぞ。お前にやっとくよ」
「・・・」
ポケットから出した飴の袋をリンドウが放って、それをソーマが受け取った。
「・・・」
「・・・あまー」
前日と同じように口に入れてやると、おうるは嬉しそうに笑った。
「それで、とりあえず服は持ってきたけど、その前に体洗わないとね」
「?」
「髪と服はアラガミのものだから、加工できそうだね。それに、細胞を見るにしても髪なら痛くないだろうから、使いたいんだけど?」
「これ、もってくの?」
「すぐ返すよ」
「・・・」
おうるが不安そうに面々を見回した。
「・・・返さなかったら取り返せばいい」
「大丈夫よ」
「・・・」
ソーマやサクヤに促され、おうるはしぶしぶ頷いた。
サクヤに手を引かれて立ち上がる。
「とりあえず体洗いましょうか。おいで」
「僕らは研究室で待ってるよ」
「じゃあ私は失礼するわ」
「じーな、どこいく?」
「・・・また来るわ」
「・・・またー?」
ジーナを見送り、サクヤと一緒に部屋を出た。
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