Everything Is In Our Mind
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ひらひらと長いスカートをなびかせて彼女は先へ先へ急いでいる。
“そんなに急がなくたって―――”
心の中ではそう思うけれど、言ったところで彼女の歩く速度が変わるわけではないことはこの短い付き合いの中でも十分に把握していた。
「秋山さんっ、綿菓子が食べたいです!」
少しだけ前を行く彼女が綿菓子の屋台の前で立ち止まり、こちらを振り返って嬉しそうに手招きをしている。
「買わないぞ。」
「えー・・・?」
残念そうな顔をするのに気付かないフリをしてその手を掴んだ。
「はぐれても探してやらないぞ。」
少し気恥ずかしそうに俯いた彼女の手を引いて歩く。

年明け早々、近所の小さな神社で小さな祭りがある。
もっともカンザキナオは毎年初詣ついでに行っているらしいが、“秋山さんも一緒に初詣、どうですか?”なんて言うものだからつい着いて来てしまった。
そんなに大きくない神社なのに以外と人が多いことに驚く。
屋台も色々出ていて、この寒い時期の祭りはなんだか妙な気分だ。
俺の手をぎゅっと握っている彼女といえば、そんな違和感などとうの昔になくしてしまったかのようにきょろきょろと屋台を見回しては物欲しそうな表情を浮かべている。
「秋山さん、りんご飴・・・」
「何をしに来たんだ・・・」
「・・・初詣、です。」
「だったら先にお参り、だろ?」
「じゃあ、・・・あとで買ってもいいですか?」
上目遣いでおずおずとそう尋ねる彼女に、そっけなくああ、と返事をした。

人混みを抜けて、参拝を済ませる。
長々と手を合わせていた彼女が何を願ったのかは――訊かなくてもなんとなく分かるから訊かないでおこう。
「秋山さんは何をお願いしたんですか?」
「さぁね。」
「教えてくれないんですか?」
「人の願い事なんてどうだっていいだろ。」
「そんなことないですよ、秋山さんの願いは私の願いでもありますから!」
「またわけの分からないことを・・・。」
あまりに真剣に顔を覗き込んでくるものだからつい笑ってしまう。
「なんで笑うんですかー!もう、真剣に聞いてるのにー。」
「人のことより自分の心配をしろ。願い事、たくさんあるんだろう?」
珍しく食い下がってくる彼女をそこはかとなく交わして、彼女を置き去りにしないスピードを心がけて先を行く。
慌てたようについてくる彼女は、まるでペットか・・・小さい子供みたいだ。

来たときと同じように、人並みにはぐれないように―――その小さな手を取ってみる。
一瞬強張った彼女の指が、次の瞬間には力強く握り返してくる。
こういう関係を許されていることに少しだけ安堵した。

「・・・で、何か買うんだったか?綿菓子?りんご飴?」
「両方・・・は駄目ですか?」

見上げてくるその大きな目に負けた気分になる。

「・・・じゃあ両方買ってやるよ。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

110119
晶さんからの「親子っぽい秋直」を…目指してみたんですけどなんか違いますねorz
どこまでもお父さんな秋山さんが好きです。
直ちゃんに甘いところも。甘いところが?w
リクエスト有難うございましたー!




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -