そのより
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「秋山さんのおうちに行って良いですか?」
そんなメールが入ってきたのが数時間前。
このまま返さなかったら彼女は多分電話をかけてくるだろうと思い、暫く携帯電話を握り締めながら考えをめぐらせて、結局「来ても何もないぞ」とだけ返信をした。

しばらくすると玄関のチャイムが鳴る。
「秋山さん、来ちゃいました!」
扉を開けると、頬を紅潮させた彼女がいた。息が白い。
「寒いだろ、早く入れよ。」
「有難うございます!」
迎え入れると、彼女はそそくさと部屋に上がりこむ。

「暖かいですね、この部屋。」
「ずっと暖房入れっぱなしだからな。」
「あ、私ご飯の材料買ってきたんですよ。すぐ作りますから・・・」
「・・・少し休めよ。」
相変わらずあわただしく何かをしようとする彼女を宥めて、ソファに座らせた。
コートを脱いだ彼女はそのポケットから何かを取り出すと、手にぎゅっと握り締める。
「・・・何持ってるんだ?」
「あ、これですか?」
その手にあるのは、ふわふわした薄っぺらい物体。
「何だそれ。」
「アルパカです!可愛くないですか?」
「いや、どういう生き物かを聞いてるんじゃなくて…」
彼女が俺の手にそれを押し付ける。暖かい。
「カイロケースなんです。他にも色々あるんですけど、これがお気に入りで…」
ふーん。気のない返事をして、アルパカとやらのカイロケースを見た。
なるほど、好きそうだなこういうの。妙に納得する。手の中で熱を発するそいつを眺めていると、彼女が不意に笑った。
「秋山さん、それ気に入ったんですか?」
くすくす笑いながらそう言ってくる彼女にそんなことはないと返すと、そうですか?と聞き返されて少し気恥ずかしくなった。
それ以上言い返すのもそのまま返すのも癪だし、アルパカを片手に持ったまま、もう片方の手で彼女の手を握る。
「・・・俺の手の方が暖かいだろ?」

ハッとしたように手を引っ込めようとした彼女の頬は、さっきより赤かった。
当然、そんな簡単に手放すわけがないのだけれど。
「アルパカとどっちがいい?」
「・・・秋山さんのいじわる。」

手を握り締めたままでするこんな問答も、この季節なら許される気がした。

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20101122
いい夫婦の日にいい夫婦っぽい秋直をめざ…せなかったorz




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