Watery light
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日中は連日茹だるような暑さが続いていても、夜になればそれなりに涼しい。
エアコンをつけたまま部屋を閉め切っても別にかまわない。
けれど、風がある日は窓を開けていたほうが何となく気持ちがいいせいか、二人のうちどちらかがそう言い出したわけでもないのにいつの間にかそうすることが当たり前になっていた。
空が暗くなる時間もだいぶ遅く、今…20時くらいにならないと夜らしい感じもしない。
どこからか聞こえる花火の音。となりの窓からする風鈴の音。気付いたら咲いている朝顔。
いろいろなことが重なって、夏を実感する。
手元にあったうちわでぱたぱたと仰ぎつつ、彼女が窓に近づいた。
風で開きかけたカーテンを気にしたのかと思い、特に気にもせずいると

「あ。」

彼女が何かに気付いたような声を上げる。

「どうした?」
「秋山さん、見てください。」
カーテンをすこしだけそっと開けて、彼女が手招きをした。
小さい子供に「しーっ」とするように、唇に指をあてたまま俺を見る。
静かに席を立って近づくと、窓辺に微かな明かりが見えた。

「・・・蛍?」
それは都会ではなかなか見ることが出来ないものだった。
「珍しいですよね。」
彼女がそういって笑う。
網戸にしがみついて、ぼんやりとした光をちかちかと点滅させている姿は、どこか必死にも見える。
「こいつだけなのか?」
「他にはいなさそうですけど・・・もしかして迷子ですかね?」
「そうかもしれないな。」
少し彼女が眉をひそめた。迷子の蛍に同情でもしているのだろうか。
しばらくそのまま、二人で蛍を眺める。
光ったり消えたり、その光はどことなく幻想的で、なのになぜか冷たいような雰囲気もかもし出していてとても不思議な感覚に包まれる。
食い入るようにそれを眺める彼女の横顔も、見慣れているはずなのにいつもと違う感じがした。

どのくらい時間が経っただろう。窓からカーテンを揺らす風が吹き込んできた瞬間に、蛍は飛び立った。

「・・・行っちゃいました。」
遠ざかる淡い光を見つめたまま、残念そうに彼女が呟く。
「・・・でも迷子なら帰らなきゃ、だろ?」
「そうですね。」
確か蛍は綺麗な水場でしか生きられないんだったかな。
ぼんやりとそんなことを考えていたら、彼女の元に蛍が来たのも何となく納得がいくような気がした。
「なぁ、」
「はい。」
「今度どこか、蛍見に行こうか。」

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100819
リハビリリハビリ・・・。




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