様症
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雑誌の特集記事に「姫系」なんて書いてあるから、また馬鹿正直な彼女は「お姫様だったら」なんて夢を見る。
「お前、その年で姫って…」
「なんでですか、私まだピチピチの二十歳ですよっ」
笑顔でそんなこと言われても。
そりゃあ世間的に見て二十歳って言えば十分若いだろうが。
「…なあ、知ってるか?」
「何をですか?」
「白雪姫は12〜13歳なんだぞ?」
彼女は目を丸くしている。
「これはディズニーの基準だけどな。眠れる森の美女が15歳、人魚姫が16歳、シンデレラが17〜19歳くらいだそうだ。」
10代ですらないのに、「お姫様」をまともに考えているような彼女だからこそ愛おしいと思うのだが、一応現実はしっかり理解させないといけない。
「お姫様ってみんな若いんですねえ!」
…何か違う。そうじゃない。
「12歳で王子様が迎えに来るなんて羨ましいですねっ、秋山さん。」
そこじゃないんだ問題は。
「まあ現実で起こったら確実に逮捕されるけどな。王子が二十歳前後なら。間違いなく。」
夢見てる場合じゃないだろう。王子なんていやしない。
「まあ所詮おとぎ話だ。」
夢見る彼女に少し申し訳ないと思いつつも、冷静に言い放つ。
彼女はじっと俺を見る。
「何だ。」
「ってことは私、年齢的にはシンデレラとあまり変わらないんですよね?」
「まぁ、そういうことになるな。」

シンデレラ。
裕福な家庭だったのに母の死をきっかけに継母にいじめられる日々へと早変わり。
魔法使いの助けを借りた舞踏会で王子に見初められ幸せになったお姫様。

…確かに彼女自身と多少被るところもあるような気もする。

「昔、父によくシンデレラの絵本を読んでもらいました。私には母はいなかったけど、継母にいじめられなくて良かったなって。」
ちょっと似てませんか?と彼女が笑った。
「憧れたんですよ、舞踏会。だから今でもちょっと、お姫様になれたらなって思うんです。」
何も言い返せなかった。

「あ、でも…」
「?」
「白雪姫の王子様が二十歳ぐらいってことは、年齢差大体8歳ぐらい…ですよね?」
「まあ王子の年齢までは俺は知らないがな。」
「でっ、でも!!仮に年の差8歳の王子様だったら、私の王子様はきっと秋山さんですね!!」
「はぁ?」
彼女がニコニコと俺を見る。
「…王子って言うか…俺、犯罪者だけど。」
「だって秋山さんは私を助けてくれましたし…それに、もう犯罪者じゃありません!私にとって秋山さんは―――」
言いかけて、途中でハッとしたようにやめる。
「何?」
ちょっと意地悪く聞いてみる。
「…っ、」
「ま、なんでもいいけどな。別に。」
「こんな意地悪な王子様なんていませんよ…。」
「当然だ、俺は王子じゃないからな。お姫様?」
何かを言い返したそうな目でこちらを見ている彼女は、とても二十歳には見えない。
「お前がおとぎ話の世界でお姫様なら、俺はお姫様をさらいに行く盗賊ぐらいがお似合いかもな。」

ワンテンポおいて彼女が口を開いた。
「良いですよ、それでも。」

そういやあったな、そんな話も。アラジンだったっけ。
二人で顔を見合わせて笑う。

「お前みたいなお姫様は、きっと王子の方が苦労するよ。」

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100701
やたらとディズニープリンセスに詳しい秋山さんキモい(えっ)




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