GO TO TDL 004
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「なぁヒョウ柄ぁ。」
「何だよキノコ。」
両手にピザとドリンクが乗った紙のトレーを抱える彼らは、完全に場違いな雰囲気を醸し出している。
「秋山が気付かないなんて有り得ると思うか?」
メガネの縁をキラリ、と光らせてフクナガがエトウに問いかける。
「ある程度距離置いてるし、大丈夫じゃないか?」
脳天気に答えるエトウに、フクナガはやれやれと首を振って深いため息をついた。
「…だからお前はダメなんじゃねーの…。」
「なんだと!」
手をあげようにも両手は塞がっていて、エトウは苦々しい顔を浮かべるしかない。
「ようやく帰ってきましたね。」
胡散臭い笑顔で2人を出迎えるヨコヤに、フクナガはトレーを押し付けた。
「直ちゃんたちは?」
「まだ出てきてませんよ。中も相当混んでいるようですから。」
「さ、私達もさっさとこれを片付けてしまいましょう?」
「…人に買いに行かせて呑気なもんだなー」
さすがに正面に立ってたらまずいだろうと、場所を移動してから食事にかかる。

スプラッシュマウンテンに乗れる時間はもうすぐだった。
ご飯はすっかり食べ終わっていて、それでもあまり動き回って体力消耗するのも得策でないように思えて、束の間の休息のつもりで居座っている。
「秋山さん、足りましたか?」
なんて聞いてくる直に、大丈夫と答えると直は良かった、と笑った。
「そろそろ行くか。」
「もうすぐ乗れますもんね。」
2人は席を立ち、バンケットホールを出ようとしたが、入り口付近で直がふと立ち止まる。
「どうした?」
「秋山さん、あれの前で一緒に写真撮りませんか?」
直が指差した先には、トランプ兵。なるほど、さっきから彼女が入り口付近を気にしていたのはこれの前で写真を撮ってる人がいたからか、と秋山は理解した。
秋山が返事を渋っていると、スタッフらしき女性が「お撮りしますか?」なんて声をかけてきて、直が不安げな顔で秋山を見上げる。
「…分かった。」
「ありがとうございます!」
直は自分の携帯電話をスタッフに預けてトランプ兵の横に立った。秋山も少し間を開けて直の隣に立つと
「すみません、もう少しだけ寄って貰えますか?」
スタッフに言われて、直との距離を詰める。
はい、チーズ!の後に、あの携帯電話特有のシャッター音が響いた。ニコニコと笑顔で携帯を返してきたスタッフに、直も笑顔で感謝を述べる。スタッフは忙しそうに去っていく。
「…秋山さんは嫌がるかと思いました。」
「………。」
「でも、ありがとうございました。」
にっこり笑う彼女の笑顔には勝てないなぁ、と秋山は思う。
「記念だから、な。」
「あ、後でこの写真送りますねっ。メールで!」
「…あぁ。」
そんなやりとりをして、次の目的地へと向かう。


「あっ、あっきー出てきた!!」
すっかり暇を持て余し気味だったフクナガが真っ先に気付く。
「ではさっそく…」
そう言って後をつけようとするヨコヤに葛城が待ったをかけた。
「落ち着いてください。時間帯的にも彼らがこれから向かうのは間違いなくスプラッシュマウンテンでしょうし、そんなに急がなくても見失いませんよ。」
「でも後着けなきゃ…」
「ヒョウ柄さん、それだから貴方はそこのキノコにも馬鹿にされるのですよ。」
何かを言いかけたエトウは完全に黙ってしまった。
「何故です葛城さん。この期に及んで尾行を止めようとでも言うのですか。貴女らしくない。」
「…貴方まで馬鹿になったのですか。よく考えてもみてください。同じ時間帯のファストパスを取っている、と言うことは、同じ乗り物に乗る可能性も高い、と言う事ですよね?」
そこでフクナガが入ってくる。
「さっすが、オレも今同じ事考えてたんだよねー!!さすがにそこまで近寄ったら、あっきーにバレるんじゃない?ってさぁ」
「あ、そっか!!」
「…おい虎耳のヒョウ柄。お前は本当にどこまでも馬鹿だなあ…」
「…じゃあいいよ、おれジェットコースター系苦手だからパス!!」
フクナガの突っ込みは無視してエトウが辞退を申し出た。
2人が大分遠くに見えるので、葛城がとりあえず歩きながら話しましょうと歩き始める。
「このアトラクションに乗るのは、1人。後の3人は出口で待つと言うのが良いと思うのですが、いかがでしょうか。」
「でしたら、そこはこの私が」
「おい白髪、何勝手に行こうとしてんだ。オレ様だって乗りたいし!!」
「私は濡れる可能性があるので辞退します。あとはお二人で決めてください。」
葛城はそう言い放ってカツカツと歩いていく。フクナガはヨコヤを睨む。
「大体お前白すぎて目立ちすぎなんだよ!」
「…原色まみれの貴方に言われるとは心外ですねぇ。」
「どっちでもいいから早く決めろよー」
「ヒョウ柄は黙ってろっ!!オレはこんなに待たされたんだからアトラクションを楽しむ権利くらいはあるはずだっつーのっ」
ヒートアップするフクナガにヨコヤは余裕の笑顔で言う。
「フクナガくん、取引しましょう。」
フクナガが止まる。
「神崎さんたちと一緒にアトラクションに乗る権利、私に売ってくださいませんか?」
「……いくらで。」
「そうですねぇ、このくらいで。如何ですか?」
ポケットから小切手を取り出してスラスラとペンを走らせ、フクナガに手渡す。フクナガの目の色が変わる。
「…どうぞ、ヨコヤ様。」
「軽っ!!」
「うっせーヒョウ柄!!こういうのはヨコヤ様の出番だろうが!!」
「どうでもいいけどこの夢の国でそういうの止めろよ…」
「あぁそうだ、フクナガくん。その帽子を貸してください。貴方の仰る通り、確かに私は少々目立つかも知れませんので。」
「…帽子くらいで誤魔化せる白さじゃないでしょう、貴方のは。」
「あぁ、あと葛城さん。その黒いストール、貸しt」
「お断りします。」
笑顔で断る葛城に、ヨコヤも笑顔で固まる。
「代わりに、さっき買ったストールを売って差し上げても良いですよ?」
葛城が続けた。
「…ほら、2人とも入場してしまいますよ?」
「分かりました、買いましょう。貴女のお好きな値段で。」
「定価で良いですよ。急いでください。支払いは後で結構ですから。」
ストールをヨコヤに押し付けて、先を促す。
ヨコヤはフクナガから帽子を受け取り、ニヤリと笑って秋山と直を追いかけた。
「さて、私達は出口で待つとしましょう。」

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100528
もはや女史メイン。




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