GO TO TDL 003
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パレードの時間が終わると、もうすぐお昼時だった。
「ねー、お腹減ったんだけどー」
退屈そうにパレードを眺めていたフクナガが切り出した。
「食べるものでしたら、その辺りでいくらでも買えるじゃないですか。それに先程何か食べてましたよね?子供じゃないんですから…」
冷静な葛城にフクナガは何も言い返せずに更に不機嫌な表情になる。
「直ちゃんたち、パレード終わったのにベンチに座ったまま動かないしなあ…。俺もポップコーン買ってこようかな。」
「よし行ってこいヒョウ柄!そして俺様に半分よこせ!」
「ヤだよ、だってお前さっきターキーくれなかっただろ」
「なんだとー!?」
ヒョウ柄に殴りかかりそうな勢いのフクナガを、ヨコヤが止めに入る。
「そんなにヒートアップしないでくださいよ2人とも。ほら、神崎さんと秋山君がどこか行くようですよ?」


パレードを見ている時の直は、とても成人しているとは思えないほどの笑顔やハシャぎ具合で、秋山はそんな直を見ている方が面白い…などと思っていたが勿論口には出さない。
パレードが終わってからも人が捌けるまで近くのベンチに座っていたが、すごかったですねぇ、などとニコニコと話す直の笑顔も声も心地よかった。
だいぶ混雑が緩和されてきた頃にはもう時間は正午近く。スプラッシュマウンテンまではあと1時間半くらいある。
「…なぁ、何か食べに行かないか。」
秋山が切り出した。
「もうそんな時間ですか!?」
「あぁ。」
「あ、それだったら私、さっき通りかかったレストラン?に行きたいです。」
直がガイドマップを広げて指差す。
「メリーゴーランドの近くにあったんですけど…あ、ここです。」
クイーン・オブ・ハートのバンケットホール。あのトランプ柄の建物か…秋山は直の地図を覗き込んで場所を確認して腰をあげる。
「じゃ、そこ行くぞ。」
はいっ、と返事をして直も秋山に続く。さっき来たルートを後戻りして、お目当ての場所へ足を踏み入れると直はまたも目を輝かせた。
「すごい…可愛い!!」
白と赤のポップな床、入り口にはトランプの兵隊。とりあえずトレーを手に列に並ぶ。
「秋山さん見てください、アリスがいますよ!!」
小さい子供がアリスのコスチュームを着て、両親に手を引かれているのを見て直が言う。
「可愛いですねぇ。」
「…お前もああいうの、似合うんじゃないのか?」
「えっ?…やだ、秋山さんったら何言ってるんですか!!ああいうのは、小さい子が着るから可愛いんですよ?」
「…似たようなもんだと思うがな。」
「私、そんなに子供じゃないですよ…」
直がむくれているのを秋山は敢えて見てみぬふりをして、「ほら、料理取って進まないと。」と先を促す。
結局2人ともスープにサラダ、フランクステーキ…といった無難な料理をチョイスしてから席についた。
「椅子が低めですね」
「子供が多いからな、仕方ないんじゃないか?ところでそのカップは?」
「あ、これですか?ムースが入ってるんですけど、食べ終わったら持って帰って良いらしいんですよ!!可愛くないですか?」
直が手にしているハート型の小柄なマグカップには、不思議の国のアリスのキャラクターが描かれている。
「デザート兼、お土産ってわけか…。」
「すごいですよねぇ。美味しく食べて、更に持って帰れるんですもん。」
「…そうだな。」
きっと帰ったら彼女はこのマグカップで甘いココアか何かを飲むんだろう、秋山はそんな事を考えつつ料理を黙々と口に運ぶ。目の前の直が普段より美味しそうに食べるせいで、自分まで普段より満たされているような気持ちになる。
「食べ終わったら、スプラッシュマウンテンだな。」
「そうですね、楽しみです!」


「さすがに…店ん中は着いてったらバレちゃうよねー。直ちゃんだけならまだしもっ。」
バンケットホールの入口で、怪しげな4人組はひとまず立ち止まっていた。
「フクナガくんの割にはマトモな意見ですね。私も、神崎さんだけならまだしも秋山君もいるとなると…中に入るのは得策ではない、と思います。」
「俺の割には、って何だよ葛城…」
「でもこのままここで直ちゃんと秋山が出てくるの待つのもなぁ…。」
「あーもーイライラするっ!!フクナガちょー腹減ってるんですけどー!!」
「大きな声を出さないで頂けませんか。みっともないですよ、このキノコ。」
「キノコって言うなッ」
頼りないフクナガとエトウを制している葛城に、ヨコヤが話しかける。
「葛城さん、貴女携帯電話はお持ちですか?」
「当然ありますが…そんな事を聞いてどうするんです?」
ポーカーフェイスを崩さない葛城に、ヨコヤは微笑む。
「いや、あちらのお二人でしたら、お金さえ払えば食べ物を買ってきてくれるんじゃないかと思いましてね。ほら、このガイドマップを見ると少し先にピザとか売っているところがあるんですよ。」
ヨコヤがガイドマップを広げて指差した。
「どうでしょう。全員で番号を交換してから2対2に分かれて、2人はここで見張り、2人は食べるものを買いに行くと言うのは。勿論お金は私が全て出しましょう。」
「…良いでしょう。ただし、私はここで見張り役に残ります。」
「…決まりですね。」
ヨコヤはフクナガとエトウを呼んで、番号を交換した上でピザを買いにいくように頼む。
「何でこのフクナガ様がヒョウ柄と買い出し係なんかしなきゃならないんだよ!」
「そうだよ、じゃんけんとかで決めようぜ!」
明らかに面倒くさがっているフクナガとエトウは当然のようにヨコヤにくってかかるがヨコヤは2人に1枚ずつ1万円札を手渡して言う。
「私と、葛城さんの分。ピザを1つづつ。それから飲み物…葛城さんは?」
「…アイスティーで。」
「アイスティーと、アイスコーヒーを1つずつ。お釣りは結構です。行ってきて下さいますよね?」
フクナガの目の色が変わる。
「喜んで行かせて頂きます!行くぞヒョウ柄ァ!!」
「ちょっ…お前いい加減にしろよキノコ!!」
走り出したフクナガにエトウも着いていく。
「…ちょろいですね、まったく…。」
クックッと笑うヨコヤに、葛城がため息をついた。
「もし今秋山君と神崎さんが出てきたら、貴方は彼らに連絡しますか?」
「するわけないでしょう?」
「…そうですよね。まぁ、ファストパスまでの時間潰しでしょうから、そんなにすぐには出てこないでしょうけど。ここで一度はぐれたら…大変ですからね。」
にっこりと口角をあげて笑う葛城に、ヨコヤも微笑み返した。
「早く帰って来ませんかね、あの2人。」

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100521
まだ続きます…




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