GO TO TDL002
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ワールドバザールを抜けて左奥、目指すはスプラッシュマウンテン。
「あ、秋山さん!私あれも乗りたいんですよ。」
直が指さしたのはカリブの海賊。あまり待ち時間はなさそうだ。
「ここはあまり待たなくても乗れそうだな。後でも良いんじゃないか?」
秋山はインフォメーションマップを見直す。
「お前が乗りたがってるやつ、多分凄い混んでる。このファストパスとか言うの、貰ってから他のアトラクションでも遅くはないだろ?」
直も秋山の手にある地図を覗き込む。こんなのあるんですねーと感心したように頷いて、
「分かりました!じゃあこれ、早く貰いに行きましょうっ!」
と秋山の手を引いて急ぎだす。秋山も直に引きずられる感じで速度を速めた。
ここはとにかく人も誘惑も多い。ショップに少しだけ、なんて足を止めたら30分くらい時間を盗まれるなんてザラなのだ。目的があるのなら、少しでも早く済ませた方がいい、と秋山は考える。ひとつアトラクションに乗るにも、さっきから通りすがるものを見ているだけでも45分待ちだの80分待ちだの看板が目に飛び込んでくるし、恐らく「ファストパス」とやらが設置されているアトラクションは相当な待ち時間が予想される。
ポップコーンやアイスクリームのワゴンの誘惑にも打ち勝って敷地の奥へと急ぐ。
「あ、」
直がいち早く目的のアトラクションの列を見つける。
「普通に並ぶと90分待ち…みたいですよ。」
「人気なんだな…」
「ファストパス…発券機…」
キョロキョロと辺りを見回すが、どこにあるのか今ひとつ分からず、結局近くにいたキャストに訊く。あちらですよ、と笑顔で案内されて、別に良いのに直まで笑顔で受け答えしているのを見て秋山の表情も少し和らいだ。無事チケットを発券して、一息つく。
「一回発券すると、次のチケット発券まで待たなきゃならないんですね…」
「そりゃあ…ファストパスチケット発券し放題だったらファストパスの意味なくなるだろ…」
「確かにそうですね。」
「このチケットで指定されてる時間まで、結構あるな。何か…」
「秋山さん、私さっき通りすがりで売ってたポップコーン欲しいです!」
「…何かポップコーンも色んな味があるようだけど。」
ガイドマップを見ながら秋山が呟くと、直も興味深そうにそれを覗き込んだ。
「ソルト、ハニー、カレー、キャラメル…」
「ハニー?珍しいですね。」
「見に行ってみるか?」
「はいっ!」
ひとまず2人はスプラッシュマウンテンを後にする。

「ここのターキーが美味しいんだよねー!」
フクナガが満足そうな顔でワゴンからターキー片手に帰ってきたが、エトウは秋山と直を見張らされていた為に不機嫌そうだった。どうもヨコヤと葛城は取っつきにくくて話しかけられない。かと言ってマトモに話せるのがこのキノコだけって言うのも癪に障るのだが。
「おいおい、俺の分は?」
「はぁ?お金も預かってないのに買ってくるワケないじゃん。自分で買って来いよ、虎耳。」
「…ちっ。」
不穏な空気を察して、葛城が寄ってくる。
「仲間割れですか、こんな時に。」
「そうですよ。今は秋山くんから神崎さんを守りたい者同士じゃないですか。ねぇ、葛城さん。」
「貴方と一緒にされたくありません。」
「えっ」
どこまでもつれない葛城にヨコヤが一瞬たじろぐ。エトウは正直来るんじゃなかったと内心思ったが、口には出さなかった。
「ちょっとみんなー、俺たちもファストパス取って直ちゃん追いかけないとー」
ターキーを頬張りながら脳天気にフクナガが言うと、それもそうですね、さぁ急ぎましょうと葛城が相槌を打った。
どうやら秋山と直はファンタジーランド方面に進むことにしたようだ。
適度な距離をとりつつ、見失わないようにひっそりと後をつける。

ホーンテッドマンション前を通り抜けた時、直がスタッフを見て「あの服、葛城さんに似合いそうですよね」と言ったので秋山は苦笑いをする。まさかここまで来て葛城の名前を聞くとは。あの建物の前にいたスタッフの衣装は確かに葛城に似合うかも知れないと秋山も漠然と思った。
「秋山さん、見てください!」
指差した先には、メリーゴーランド。
「あれ乗りましょうよ!」
「…俺は遠慮しとく…。」
明らかにキャラに合わないだろどう考えても。直の興味をひくものがここには溢れているけれど、彼女はともかくその大半は秋山にはとても似合わない。
「ひとりで乗るのは恥ずかしいです…」
「お前なら大丈夫だよ。」
「…そうですか?」
「待っててやるから、乗ってこいよ。」
「良いんですか?」
「あぁ。」
そう丸めこんで、待たなくても乗れるメリーゴーランドに直を送り出す。
彼女が選んだのは、絵に描いたような白馬で、乗りながら秋山に笑顔で手を振るものだから秋山も条件反射的に手を振り返してしまい、直が見えなくなると我にかえって恥ずかしいような気になる。

「秋山くんにあんな表情をさせることが出来るのは、神崎さんくらいでしょうね。」
遠目からそんな様子を眺めて、葛城が呟く。フクナガは秋山の様子が可笑しいのか笑いを堪えている。
「神崎さんを今度白馬でお迎えに差し上げたいものです…」
「それは直ちゃん喜ばないと思う…」
「神崎さんはやはりどんな姿でも様になります。ねぇ、そう思いませんか。」
「そりゃまぁ直ちゃんは何でも似合うとは思うけどさ…」
ヨコヤに付き合わされてるエトウだが、直に関しては大抵ヨコヤの言い分に同意だった。
「そこの変態2人ィ、置いてっちゃうよ〜?」
フクナガがヨコヤとエトウを呼ぶ。
「変態じゃねーし!」
心外な呼び名に抗議しつつ、後に続く。

「メリーゴーランドなんて久々に乗りました!」
直が満足そうな顔で秋山に走り寄ってきたので、秋山は良かったなと答えた。
メリーゴーランドから、目的のハニーポップコーンの方面に歩みを進めると、どこからか甘い香りが漂ってくる。
植木をぐるっと回ったところに、その甘い香りを発しているワゴンがあった。
「入れ物も可愛いですねー」
直が目をキラキラさせている。
「結構大きいな…」
「2人でなら食べられますよ!私買ってきますね!」
秋山が返事をする前に直はポップコーンワゴンに走っていってしまう。
すぐ裏手にはハニーハントとか言うアトラクションがあり、それもすごい列を成している。アトラクションに因んだ味が用意してある事に気付いて、秋山は少し感心した。
「買ってきましたよー!」
甘い香りを漂わせながら直が秋山の元に戻ってくる。
「すごい甘そうだな…ハニー。」
「でも美味しいですよ?」
「俺は今はいい。後で貰うよ。」
秋山はどうぞ、と差し出してくる直の言葉をやんわりと断って、時計に目をやる。
「…そろそろ、パレードの時間じゃないか?」
確か1回目は11時くらいからだったような。
「さっきから通路に人が座ってるのはパレードだからですか、秋山さんよく気付きましたね!」
「入口のインフォメーションボードに書いてあったからな。見るか?パレード。」
秋山が問いかけると、直はポップコーンの容器を抱きしめたまま見たいです!と答える。
「じゃ、良く見えそうなとこ探そうか。」
直の手を引いて、秋山はキョロキョロと辺りを見回した。
いかにもここの常連っぽい雰囲気を醸し出している、カメラを構えた客がいるのが目に付いた。
どうやらこの辺りがちょうどパレードの始発点らしい。
結構な人だかりの中、いい感じに隙間が空いているところを目ざとく見つけて直を立たせる。
「見えそうか?」
「はい、ばっちりです!」
タイミング良く、パレードの音楽が鳴り響き始めた。

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100511
もう本当に長い。




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