GO TO TDL001
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カランカランカラーン!おめでとうございまーす!
商店街の福引きで、直が見慣れない色の玉を引き当てた途端にけたたましくベルが鳴らされた。きょとんとする直に、係員の人は「大当たりですよ」と告げて、ご大層な封筒を差し出した。
それが数週間前の出来事で、その封筒の中身って言うのが…

「私、2度目なんです。ディズニーランドに来るの。」
電車の中、ニコニコと直が秋山に話しかける。秋山はそうか、と短い相槌を売って、心の中で小さなため息をついた。
彼女が福引きでディズニーランドのペアパスポートを手に入れたのは数週間前。その日からと言うもの、色んなヤツらがひっきりなしに直に「一緒に行かせてくれ」と連絡を寄越してきた。多分福永辺りに直が漏らしたのが広まったんだろうが、結局彼女が同行者に選んだのは秋山だった。
当の秋山は、正直あまり乗り気でもなかったが、他の…そう、例えば福永やヨコヤやエトウ、そして葛城辺りと直が2人きりでディズニーランドなんかに行くことを考えただけで頭痛がするほどだったから、彼女からの誘いにはすぐに頷いた。
舞浜の駅を降り、改札を抜けるともうそこは別世界。わぁ、と直は小さな歓声をあげて秋山を見る。
「すごい!すごいですよ秋山さん!」
「…そうだな。」
「えっと…ディズニーランド…は、こっちですね!」
看板を見て、ランド側に向かう。今にも走り出しそうなくらいテンションの上がった直に、秋山はやれやれとついていく。入場ゲートに向かうさほど長くない通路にも、「夢の国」らしさが溢れていて直は目を輝かせている。ふいに秋山が直の手を握った。
「!!」
「ほら、ちゃんと周り見ろよ。あまり急ぐと危ないぞ」
「…はい、すみません…」
少し頬を赤らめた直の手を秋山はしっかり握って、歩幅を合わせて歩く。
手荷物検査ゲートを通って、入場ゲートをくぐればそこはもう完全に夢の国だった。綺麗に整えられた花壇に、キャラクターの着ぐるみーーもっとも、中に人なんて入っていないそうだがーー全てが完璧。
「おい、」
「あっ、はい。」
「口開いてる。」
ゲートをくぐってすぐのところで軽く立ち止まった直は、秋山にそう言われてハッとしたように口を閉じた。その様子を見て秋山はククッと笑う。
「子供みたいだな」
「…そんなこと、ないです。」
「さ、行こうか。」
再び秋山は直の手をとって歩みを進めた。


それを影からひっそり見守る人影が数人分…。
「今日のあっきーはいつもに増して積極的だなぁ。」
「黙りなさい、このキノコ。秋山君に気付かれたらどうするのです。」
「こんだけ人いれば大丈夫じゃーん?まさかこんなところまで追いかけてくるとはあっきーだって思わないでしょー。」
「ハァ…。やれやれ。だからアナタはいつまで経ってもキノコなんですよ…大体何ですか、その趣味の悪い服は。」
「黙りなさいこの白髪。あなたこそキノコに服がどうのこうの言える立場ではないでしょう?」
「ちょ、やめろよみんなして…!!」
「ヒョウ柄ー、お前は大人しくあの2人を見張ってろってさっき言ったよねー?」
「いや、だから行っちゃうじゃん!追いかけなきゃマズいって、秋山と直ちゃん!」
「行きますよ、皆さん!」
「だから何でお前が指揮執ってんだっつーの、白髪っ!!」
この夢の国に恐らくとても似合わないであろう4人組。
いや、1人は意外ととけ込んでいるが、それでもビビットカラーのキノコと白装束の白髪とヒョウ柄は明らかにここでは異端な雰囲気を醸し出している。
「そもそも、何故尾行をしようと言うのに貴方達はそんなに目立つ格好をしているのですか…特にそこの白髪。」
「そんなに厳しい事を言わないでくださいよ。神崎さんの事を考えていたら変装まで頭が回らなかったんですから。」
葛城とヨコヤが、仲がいいんだか悪いんだかな言い争いをしている間に、江藤と福永はひっそりと秋山と直を見守る。


すれ違う人が、みんな頭に着けているアレが直は気になって仕方ないらしい。
「…欲しいのか?」
「えっ」
「いや、さっきから耳、物欲しそうな顔で見てるから。」
入場してから数十分、道行く人みんなが頭に耳を装着しているのを見た直は、とても羨ましそうな表情を浮かべているのに自分でも気付いてなかったらしい。
「いや、でも別に…」
「顔に欲しいって書いてある」
意地悪そうに秋山がそう言うと、黙ってしまった。
「ほら、好きなの選べよ。このくらい買ってやるから。」
「い、いいんですか?」
売店で足を止めて、見入る直に秋山は少し和む。他のヤツらにチケットを渡さずに済んだことに、少しだけ感謝した。
「これにします!」
耳を装着した直の笑顔に秋山も少しつられて、売店を出る。
「まずどこに行きますか?」
「そうだな、乗りたいのは?」
「私、これに乗りたいです!」
園内ガイドを指差した直に秋山は分かったと答え、そのアトラクションの方向に歩きだした。


「秋山くんも耳くらいつければ良いのに、相変わらずノリが悪い…。しかし神崎さんにミニー耳はナイスチョイス。そこだけは認めて差し上げましょう。」
「黙りなさい白髪。何故耳だけ青いものをチョイスしているんです?スティッチ?宇宙人気取りですか。どうせならあの白いネコ耳にすれば良いじゃないですか」
「おやおや、そういう貴女こそちゃっかり神崎さんと同じ耳ですか…。なかなかお似合いですが神崎さんにはかないませんね。」
「貴方にとやかく言われたくはないです。」
「ヒョウ柄ぁ、お前その耳ヒョウじゃなくて虎柄じゃーん!!フクナガちょーウケるんですけどー!!」
「うるせーよこのキノコ!大体なんでお前だけ耳じゃなくて帽子なんだよ!」
「こっちのがオシャレだからに決まってんじゃん。お前は相変わらずバカだなぁ〜」
尾行している割には賑やかな集団も後に続いた。

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100507
すみません続きます…




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