目がせない
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
君が買い物に行くというから、行ってきたら?と答えたら不機嫌な顔をされた。
気付かないフリをしても良かったのに、何故だか君の隣で荷物を持っている俺は一体何をしているんだろう。
「秋山さん、ごめんなさい。荷物持ってもらっちゃって…」
「いいよこのくらい。…ところでまだ買うつもりか?」
「…だめですか?」
「駄目なんて一言も言ってないだろ。」
バイト代が入ったから、新しい服が欲しいと言うのも仕方ない。彼女はいつも小綺麗にしているし。
「じゃあ、あと1件だけ見ていいですか?そうしたら晩御飯のおかず、買って帰りましょう。」
「分かった。」
俺はショップの名前が入った紙袋を両手に持って、彼女の後ろをついていく。…と、聞き覚えのある声がした。

「あれ?あっきー?」
…聞きたくない声だった。無視を決め込もうとしたが、俺よりも先に彼女が反応する。
「あ、福永さん!!」
「あっ、直ちゃーん!!なになに、2人して買い物〜?」
「はい、というか…秋山さんに付き合って貰ってて。」
ねっ、秋山さん。と彼女が笑顔で俺に振る。…ああ、とぶっきらぼうに答えるしかない。
「へぇ…あっきーが直ちゃんの買い物にねぇ…」
「別にいいだろ」
「ダメなんて一言も言ってないじゃん?相変わらずだなあ」
ニヤニヤ笑うこいつの顔は、明らかに俺を面白がっていて不愉快だ。
「直、」
紙袋の束を片手にまとめて、彼女の手を取り、
「次の店で終わりなんだろ。早く行こう。」
急かすように言う。
「あ、そうですね。夕飯の買い物も行かなきゃだし…福永さんすみません、あまりゆっくりお話出来なくて。」
「良いよ良いよ、ごめんね〜。忙しいのに話しかけちゃって!…また今度ね。」
「はいっ!」
福永に手を振る彼女を半ば強引に引っ張るような形で先を急ぐ。なんだか胸がざわざわする。

「秋山さん…手…」
彼女にそう言われて、はっと手を離した。
「…悪い。」
「いえ、大丈夫です。」
「…お前、2人っきりで福永に会ったりしてないよな?」
「?福永さんも忙しいですから、それは今のところはないです。どうしてですか?」
きょとんとした顔で答える彼女の顔に目眩がする。
「ならいい…。」
油断も隙もあったもんじゃない、とため息をついた。
彼女を世の中の様々な悪意から守るためには、相当気をつけてないと。そう自覚して、彼女の後ろ姿を眺める。


とりあえず、これからは彼女の買い物にはなるべく付き合おう。そう心に誓いながら。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

100426
初福永。
そして相変わらずのパパ山。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -