いればいいのに
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薄暗い雲がもうすぐ夕立を運んできそう。
私は相変わらずいつものように秋山さんの家に入り浸って、ベッドに腰掛けている。

秋山さんはと言うと、壁に寄りかかったまま本を読んでいる。勉強熱心だなぁ…と感心する。そう言えば私も課題をやらなくちゃ…。
外からはぱらぱらと音が聞こえ始める。雨が降ってきたのだろうか。

「秋山さん、私帰りますね。」
「あぁ。」
本に視線を落としたまま、秋山さんが答える。
ベッドから立ち上がって荷物を手に取り、玄関に向かう。
靴を履こうとして気付いた。
「あ、あれ?」
靴がない。

すぐ後ろからくくっ、と笑い声が聞こえる。

「秋山さーー」
振り向くと、不意に抱き締められた。
秋山さんの手にあった何かがバラッと落ちる音…あれは多分私の靴。

「帰らなければ良いのに。」
耳元で秋山さんが囁く。息が少しだけ苦しい。
状況をゆっくりと飲み込んで、私は秋山さんの胸に顔をうずめたまま小さく頷く。


耳には、秋山さんの鼓動と雨の音だけが響いていた。

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拍手第2弾




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