偶然×必然
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「偶然、でしょうか。」
いつものように唐突に直が言う。あまりに唐突だったため、秋山は真意が掴みきれなかった。
「は?」
「私と秋山さんが出会ったこと…。偶然だったのかなって思って。」
出会い。
ライアーゲームに巻き込まれた彼女が、偽弁護士に言われた「詐欺のことは詐欺師にきけ」を真に受けたのがそもそもの始まりだった。
あの時、私が道に迷っていなかったら出所したばかりの秋山さんには会えなかったんですよねぇ。
直は脳天気な声でそう続けた。
「偶然、ねぇ…」
運命とか、そういうものは信じない。ただ、何かしらの偶然が積み重なって今のような状態になっていることは紛れもない事実だ。秋山はそう考える。
もし、あの時神崎直が自分に突っ込んでこなかったら。
もし、神崎直に出会うことなく過ごしていたら。
出会ってしまった今となっては、「もし」はどんなに考えても意味がないことだった。
事実、2人にはもはやお互いがいない生活など考えられない状態なのだから。

「私、たまに考えるんですよ。もし秋山さんに会っていなかったら。ライアーゲームに巻き込まれていなかったら、って。」
直が微笑む。
「でも、どう考えても…やっぱり秋山さんに会えて良かったって思うんです。いつも。」
「そりゃどうも。」

秋山は手元のコーヒーカップを口元に運び、少し考えて言った。

「必然、かもな」
「え?」
直が聞き返す。

「俺たちが出会ったこと。偶然じゃなくて必然だよ。きっと。」
「必然…」
「偶然がもういくつも積み重なってる。そうなると、最早偶然とは呼べないだろ?だから、きっと必然。」
この繋がりは、多分偶然なんかじゃない。秋山は漠然とそう思った。
「案外、俺たちが出会うことなんて最初から決まってたかも知れない。」
「…じゃあ、運命ですね。」
ニコニコしながら直が呟いた。

秋山ははっとして、それから直の言葉を脳内で反芻する。"運命ですね"
確かにそうだ。偶然の積み重ねが必然なら、必然が積み重なったなら運命になり得るのかもしれない。そう思ったら、急に笑みがこぼれた。
――…運命なんて、信じてなかったのに。

「ああ、…そうかも知れないな。」

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100422
互いが必要な時に出会えるなら、それは偶然でも必然でもなく運命論。




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