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秋山が直の家に行くと、家中甘い香りで満たされていた。
何事かと訊くと、
「明日は友達の誕生日なんですよ!」
と答える。
ふぅん、なるほどね。キッチンにある椅子に座って、秋山は忙しなく動き回る直を眺めた。
そう言えば彼女の作るお菓子は食べたことがなかった。食事はしょっちゅう口にしているけれど。
甘いものはあまり食べないけれど、目の前でこうまで甘い香りを振りまかれると少し食べたいような気になってくるから不思議だ。
生地を型に流し込んでオーブンに押し込み、ようやく一段落したのか、直の動きが止まる。
「洗い物、手伝おうか。」
「あ、それよりもホイップクリームを泡立てるのを手伝って貰えますか?電動泡立て器があるのですぐ出来ると思うんですけど…」
「分かった。」

直が洗い物を片付けている間に、秋山がホイップを泡立てる。
ガシャガシャガシャ、と小気味よい音を立てる泡立て器のおかげでホイップクリームはあっと言う間にそれらしくなった。
「このくらいでいい?」
「完璧です!さすが秋山さん!」
わぁ、と直が嬉しそうに声をあげた。正直誰にでも出来るだろう、と秋山は思ったが敢えて言うこともないだろう…と言葉を飲み込む。

スポンジがいい具合に焼けて、あら熱を冷ましてさっき泡立てたクリームを塗る直の手つきはとても慣れていて、秋山は思わずそれに見とれる。
あっという間に見事なケーキが出来上がった。

「喜んで貰えるかなぁ…」
「これを貰って喜ばないヤツはいないさ。」

「ところで、友達って?」
「あ、明日福永さんの誕生日なんですよ。秋山さん知りませんでした?」
秋山の表情が一変した。

「…直、」
「はい?」
「これ、オレが食べちゃダメか?」
「何言ってるんですか秋山さん、ダメに決まってるじゃないですか!!」

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100421
もちろん直ちゃん家で誕生日パーティー。



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