ウレイ
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道端で折れた花を見つけたので、思わず手に取る。昔よくやった、花占いなんかをしてみる。

すき、きらい、すき、きらい…

1枚づつ花びらをとって、途中でそんな事よりも彼に会いたいと思い、ため息をついた。

気付いたら週の終わり。時間は確実に流れている。
平凡に過ごしていたはずなのにとんでもないゲームに巻き込まれて、その中で彼女は特別な恋をした。
花占いをする手を途中で止めて、中途半端に花弁を毟られた花をそっと地面に置く。

「好きですよ」
直の言葉に、秋山はいつも生返事で答えていた。
「ずっと一緒にいたいです」
そう告げると、いつも少し悲しげな顔をして「そうだな」と答えていた。
直はそんな口約束を信じていたけれど、秋山が突然姿を消したことでそれすら風のようにたち消えてしまった。

秋山さんは、私を置いていかない。
根拠のない期待が、今も胸にくすぶっていてたまに涙になって溢れ出る。
それでもまだ信じていたい、直はそう思う。

ふと気付くと、自分の歩んできた道にも先にも、秋山がいないことが考えられなかった。秋山のために毎日を過ごしているみたいに。
「秋山さん」
呟いてみるけれど、耳に届くのは風でざわめく木々の音だけだった。
諦められるほど大人だったなら。でも、諦めきれない想いだけが胸に募り続けていて、とてもそんなことは無理だった。失う事が、こんなに痛くて怖いなんて。
一番助けを求めたいのは秋山さん、あなたなのに。

ごう、と強い風が吹く。花びらが風に舞って、直は風の向かう先、高い空をつい見上げた。

同じ空の下に、秋山さんはきっといる―――
いつか、また会える。心にそう言い聞かせた。

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100513




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