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春の雪、と言う物語があったけれど、今日はまさにそれである。
桜が咲いて、もう散り始めているというのに外は雪だ。異常気象にも程がある。
秋山は窓際に歩み寄ると、閉まっているカーテンを指先で少しだけ開け覗いて、雪が降り続いているのを確認してからカーテンを閉め直した。
「帰らないのか?」
ソファでブランケットにくるまっている直に話しかける。

「え…だって寒いじゃないですか。」
帰らなきゃダメですか?と彼女は答える。
秋山は少し困った表情を浮かべて、煙草に火を付けた。

「いてもいいけど…」
「けど?」
「布団が1人分しかない。」

あ、と彼女は今更初めて気付いた顔をする。人を泊める事など想定していないのだから、当然の事なのに。
さすがに今日の気温で、彼女持参のブランケット1枚では寒すぎるし、かと言って同じ布団で寝るわけにも行かない。
どう考えても帰って貰うのが一番いい。

「それでも泊まる?」
念を押して訊いてみる。
「うーん…」
何を迷う必要があるんだ。
「家、帰ったら今から部屋暖めないといけないし…秋山さんが迷惑でなければ、ソファ貸して貰えたら。」
これもあるし、と笑顔でブランケットを指差す。

ダメだ、こういう時に彼女にはきっと何を言っても無駄なのだ。

「…分かったよ、勝手にしろ。」
バカみたいだ。
「ありがとうございます。」
にこにこ笑う直に、秋山はすっかり参ってしまう。
煙草を揉み消して、直の隣に少し乱暴に座る。ふーっ、と息を吐いて天井を仰ぐと、秋山の手に直の手が触れる感覚がした。
「秋山さんって」

「あったかいですね」
直の声が耳に届いて、たまらない気分になる。
「…お前さぁ…」
彼女の方に顔を向けると、その大きな瞳で真っ直ぐに秋山を見つめている直が視界に飛び込んできた。天然でやってると思うと頭痛すらする。
「男の家に上がり込んでるのに無防備すぎ。」
「――…だって、何だか秋山さんと一緒にいると安心するんです。」
もう返す言葉も出てこなかった。

無言のまま、重なっている彼女の少し冷たい手に指を絡めてみると、彼女もゆるゆると指を絡めてくる。
隣の彼女はそれが嬉しかったのか何なのか分からないが、どことなくウキウキしたオーラを出している。…まるっきり子守気分だ。
指を解いて、細い肩を抱き寄せてみる。
「!…秋山、さ…」
「こうすれば温かいだろ?」
いつものように、しれっと言う。
「はい…」
ちょっとくらいは意識してくれただろうか、この状況について。

「寝るなら俺の布団使えよ、風邪とかひいても困るからな。」
耳元で囁く。
「え、でもそれじゃ秋山さんが…」
「いいから。その代わりこれ貸して。」
彼女のブランケットでも、彼女の体温が染みついてるならないよりましだろう。
「やっぱり秋山さんて、」
彼女も秋山の耳元で囁く。
「優しいです。」
ふふっ、と笑う彼女につられて、秋山も口元が綻んだ。

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100418
子守山。もしくはパパ山。
お題は狂う世界様から




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