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欲しいものは、常に全力で手に入れてきた。
なにもかも。
時に生命の危険に晒されることもあったし、死ぬほどの経験をしたこともある。
でも、「欲」は限りなくて、「欲しい」と言う気持ちの前にはあらゆることはちっぽけだった。


巨大デパートの中、今日の獲物を探してさまよう。
欲しくて欲しくて目の前が真っ白になるほどの「何か」を、いつものように探して歩く。
「大した商品がないなァ…」
輝く宝石も、
高価な時計も、
美しいドレスも、
以前に比べて色褪せて見えた。

「……やっぱあのドレスやるんじゃなかったな。」
先日仕入れを依頼してきた少女の事を思い出す。
ゆずこ、って言ったな。確か。
自分のためではなく、父のために時計を欲しがった少女。
強い瞳で、まっすぐな心で、「時計が欲しい!」と叫んだ時の彼女を思い出すと知らず知らずのうちに口角があがる。
こういう商売をやっていると、私利私欲のために何かを欲しがる人間に出くわすことが少なくない。あんな純粋に誰かのために何かを欲しがる人間を見るのはあまりに久々で、その瞬間の彼女は何より輝いて見えた。

「ハタチじゃ遅かったかもなー…」
ぽつり、と呟く。
彼女にあげたドレスも、彼女自身も、正直なところ手放すのは惜しかった。
「欲しい」気持ちが、収まらないんだから、自分自身の執念深さに呆れて自嘲気味な笑いが漏れる。
でも何故か妙な確信もあった。
―――彼女も、ドレスも、何もかも、全て俺のモノになる。

今まで欲しがったものは何もかも手に入れてきた。
満足をすることは、きっと死ぬまでないだろう。
その「欲しい」の中に彼女が、ゆずこが含まれているのなら俺のものにならないはずがない。

頭の中でそんな風に自分自身に言い聞かせて、納得をする。
そうなれば、あとは必要なものを揃えるだけだ。

「…今度来たときには逃がさないように、首輪とか鎖とかも用意しとくかな…。」

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110906
東京デパート戦争体験記…すみません晶さんに乗っかりましたすみません!!
ゆずこちゃんが好きすぎて酷い。




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