枯れた白薔薇

僅か1秒にも満たない0,5秒。クダリとノボリの指先が触れた時間。それは余りにも短くも長いものだった。ほんの少し触れただけなのに指先がじんじんと疼き顔に血液が集まる。ちらりと笑みを固まらせている片割れを見る。自分と同じよう赤面して指先を見つめるその姿は今にも噴火しそうだ。恐らく向こうからしたらノボリもそう思われているであろう。一度そう考えてしまうとどうしようもない程差恥が押し寄せ、ノボリは俯き触れ合った指先を隠すよう握り唇を噛み締める。恥ずかしい恥ずかしい、なんだこの空気は。

「ノボリ」
「な、なんです?」

裏返る声が漏れ、更に自分を追い詰める結果になった。恥ずかしい、誰か助けて。動揺の所為か意味不明な助けを求める。クダリは吊り上っていた口角を引き締め顔を上げた。真剣な瞳をした弟に自然と胸が高鳴る。いきなりなんでそんな眼で見てくるんですか、恥ずかしいから見ないで欲しいのに。心の奥底で叫んでも相手に届くはずなく。クダリは静かに息を吸った。

「手、握ってもいいかな」
「え・・あ、のっ」
「ぼくは繋ぎたい」

愛しむような瞳で射られノボリは目の奥がじわりと熱くなる。こんなに弟が格好良く見える日がくるなんて。どうしよう嬉しいけど恥ずかしい。目など見つめ返せるなんて出来なく消極的な兄は弟から目を逸らす。しかしそれを見越してたのか。震えていた手を力強く握られ変な声が出た。

「クダリ・・!」
「ノボリ手震えてる」

指摘され尚居た堪れなくなり、手を握られ確認の為上げていた顔を再び下に。と思った刹那。空いている方の手で頬を撫でられた。

「あ・・」
「可愛い」
「な!?可愛くなど・・」
「ううん、ノボリは誰よりも綺麗で可愛いよ」
「やめて下さいまし・・・!」

否定しても肯定されの繰り返し。このままでは兄の威厳がなくなる・・!そう思い睨むも優しい微笑みに掻き消される。まるで何処かの国の王子様のような微笑み。自分の中で広がる妄想にノボリは泣きたくなった。愛らしい反応を返してくれる片割れにクダリは目を細めその瞼に唇を落とし、ノボリが奇声を発するまであと5秒。


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偶にはいちゃラブを∵