!下上妄想

クダリ、もっと踏んでくれて構わないのですよ?是非強く!ああ、そこですっ!髪を乱し息絶え絶えに身体をくねらすのは、兄ノボリ。因みに犠牲となっている弟はそんなドM全開の兄を踏み潰している。正直気持ち悪い。何故大好きな兄を足蹴にしないといけないのか、クダリは理解できなかった。しかし断ると「わたくしのことが嫌いになったんですか」と言い出して泣き出してしまう悪循環。そうじゃないと言いたくても口から出るのは溜息ばかりで、返ってそれがノボリを心配させる種となってしまう。だから日に日にクダリは喋らなくなった。勿論仕事場ではそのような性癖を微塵にも感じさせない片割れに合わせ、たくさん喋って笑う。しかし2人きりになった途端クダリは声帯を失ったように喋らなくなる。薄く開いた唇から出るのは呼吸する際漏れる息だけ。それを知ってか知らずか、兄は今日も踏んでと縋りついてくる。何故と聞けば貴方に踏まれたいと頬を赤く染め恥ずかしそうに唇を噛んだ。何故自分なの、と再び問えば貴方以外にはこんな仕打ち耐え切れないと。これまた恥ずかしそうに言われた。理解不能。同じ兄弟で双子だというのに何時からこんなに違ってしまったのか。時折苛立つこともあるが別に自分とこれ以上変な関係を望んでないなら別に。とクダリは考えていた。そしてそれが甘い考えと思い知ったのが今ようやくわかってしまった。

「退いて」
「いやです」

いつもは踏まれて目下に兄が今は目上。何故こうなったのか説明すると、数秒前押し倒された。ただそれだけで。理解したくない状況に大きく溜息をつくと頭上の身体が揺れた。ちらりと横目で様子を窺おうとしたがその前に頬に伝う冷たいもの。それは上から落ちてきて視線を上げれば自分に跨っているノボリが喉を引きつらせ声を殺し泣いていた。

「何で泣いてるのさ」

意味わからないよ。
言葉を吐き捨てる。もう構ってなんかいられない、また泣き落としでもするつもりだろうか。嫌悪感を隠さず睨みつけた刹那、空気が変わった気がした。泣く声も消え、聞こえるのは2人分の呼吸音だけ。また嘘泣きか、そんなことを考えていると苦しそうな声が頭上からした。次は何だろう。と視線を上に持ちあげると、視界を埋める自らの首を絞めている兄の姿。慌てて上半身だけ起き上がり、その弱弱しく細い手を掴む。

「っ何してるの!」
「ぐ、っ、う・・・!」

単純に力ならクダリの方が上で。絞めていた両手は簡単に解かれた。息を荒くし今にも泣き崩れそうなノボリ。なんでこんなことしたんだ。怒鳴りたくなる気持ちを抑え、いつものように無言で頭を撫で立ち上がり部屋から出ようと脚に力を入れた。自分がいるから自虐的な行為に走ったに違いない。そう考えての行動だった。けれどもそれは的に掠ってもなかったらしく。

「クダリぃ・・やだ・・いや、です」

けほけほと咳き込み白いシャツを引く兄に弟の足はぴたりと停止。静かに振り返りその不安色に染まる瞳を見つめる。


あ、今ぼく笑えてるかな。




* * * * *

自分で首絞めるノボリを書きたかっただけです。すみません。Sっ気がある弟のためMになりきろうと頑張ってるノボリのお話。
本心を打ち明けない限り永遠に幸せになれない2人です。

補足しないと理解出来ないのがエダオクオリティ