第三話 商談

瀬人は目の前の人物に胡散臭さを覚えていた。

「社長。面白いとは思いませんか?」

「ふん。インターネットでのデュエルか」

瀬人はもう一度、手にしている名刺に目を落とす。

(ゴールデン・チェス株式会社代表取締役社長、輝崎椿。

こいつは本当はふざけているんじゃないのか?

それにこいつのこの格好)

瀬人がそう思うのも無理はない。

今まで商談に来た人物は一様に画一化された格好をしていた。

しかし、インターネットでのソリッドビジョンを利用したデュエルを嬉々として説明して
いる目の前の人物は、赤い長髪に黒のストライプのスーツ、赤いサテン生地のシャツを開
襟しており首からビジュアル系ロックバンドの人間が好みそうなネックレスを覗かせてい
た。

この姿をみれば、男女かかわらず水商売系の人間かロックバンドの人間かと思うだろう。

 「面白い。検討してやらんでもない。」

瀬人はにやりと笑い目の前の男を見た。

 瀬人もまた『非日常』を始めようとした。



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