アリスドラッグ | ナノ


▼ 未来の貴方へ3


 少し身体に気怠さが残っている。何度か身体を重ね、さすがに休憩をはさもうかとオーランドが横になっている隣で、ウィルは紙とペンを持ってぼんやりと考えこんでいた。



「ウィル……? それは?」

「ん……歌詞だよ。オーランドのつくった曲につける歌詞」

「へえ……どれ、」



 オーランドは興味ありげといったようすで、ウィルを後ろから抱きしめるようにして紙を覗き込む。作った詞をみられるのは正直恥ずかしいと思ったが、どうせ最後にはみられるのだ、ウィルは隠すことなくそれをさらけ出した。



「……おまえ、結構綺麗な字を書くな」

「義父さんに字はしっかり教えていられたからな」

「ふうん……」



 『I melt into the blue』からはじまるその詞に、オーランドは眉をひそめた。なんとも縁起の悪い……そう思ったのだろう。



「『Blue』って……海のことだろ。まるで人魚姫みたいなこというじゃないか」

「俺はマーメイドだからね」

「でもべつに、伝承みたいに泡になって消えるわけじゃないだろ」

「……そうだよ、俺は、人魚姫とは違って恋を叶えることができた」

「じゃあ、なんで」



 ふ、とウィルは微笑んで振り返った。そしてオーランドに口付けをすると、穏やかに言う。



「……未来のおまえへの、ラブレター。いつかおまえがこれの意味がわかったら、俺は世界一幸せなマーメイドになるよ」


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