アリスドラッグ | ナノ


▼ 狂気蔓延1


 目を覚ますと、ウィルはオーランドの腕を枕代わりにして横になっていた。今日はわりと早い覚醒である。寝ぼけてはいない。……それでも、ウィルはオーランドのそばから逃げ出そうとはしなかった。オーランドに寄り添って、柔らかい熱に身を任せる。

 ……どうしたものか。オーランドへの恋心を捨てることは、諦めた。自分は、オーランドのことが好きだ。その想いを誤魔化すにはもう、限界があった。しかし。この船に捕らえられているという部下をどうしよう。それが、ウィルの悩むところだった。そもそも何故部下が捕らえられているのかが謎なため、オーランドに交渉することもできない。人質にして軍になにか交換条件でもだしにいくのか、ウィルが抵抗しないようにするのか……考えられるところはいくつもある。



「……ウィル?」

「あ……オーランド」



 遅れて目を覚ましたオーランドは、ウィルと目が合うとふっと微笑んだ。きゅっと胸が締め付けられるような心地がして、ウィルは俯く。



「今日は? 蹴ってこないの?」

「……うるさい」



 あまり部下のことを尋ねて警戒されてしまうのも良くない。だからオーランドに聞くのもやめよう……ウィルは色々と考えながら、オーランドの背に腕をまわす。寝起きで頭がまわらない。少しの間こうしていたい。



「ウィル」

「……ん」

「……次の島についたら、昔みたいに海岸で一緒に歌ってみないか。二人で」

「え……」



 ウィルがぱっと顔をあげる。待ち望んでいた言葉、昔からの願い。あまりの嬉しさに、ウィルの表情がぱっと輝いた。



「……うん」



 唇を重ねる。オーランドが覆いかぶさってきて、キスが深まってゆく。夢中でキスをして、時間が過ぎてゆく感覚すらも失うくらいに、胸が幸せで満たされていた。


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