余韻

「や、やばいよ、俺、やばい」

「へえ」

「波折先輩と一緒に学校来ちゃった」

「……生徒会長と?」


 教室についてからというものの、沙良はずっと浮ついていた。苦笑いする友人たちに、ひたすらに今朝の出来事を報告する。


「つーか神藤おまえ、生徒会長気に食わねえとか言ってなかったっけ? 王子様とか馬鹿らしいやら、俺が生徒会長になってやるやら」

「つ、次こそは俺が生徒会長になる。いやでも、あの人はたしかに王子様だったし、生徒会長にふさわしいと思う!」

「……単純」


 一度一緒に登校しただけでころりと態度を変えている沙良に、友人たちはどこか呆れ顔。しかし、からかうように沙良の肩を叩きながら遠い目をして言う。


「んー、でもたしかに生徒会長はかっこいいよなあ……憧れる。惚れるね! 男として!」

「そうだよ、かっこいい! ときめくぞこれは! 直接話してみるとほんとどきどきしちゃうから!」

「わあ、おまえ恋しちゃってんじゃん!」

「ねえわー!」


 へらへらと笑いながら、沙良は波折と話していたときのことを思い出す。ぎゅんぎゅんと胸を掴まれるような感覚は、たしかに恋に似ていた。イケメンって罪だよなー、と一人で思いながら、また何事もなかったように、笑う。
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