校内アイドル

 沙良は午前中は、有志発表のための最終調整をするために、リハーサル室へ向かった。音楽系の発表をするグループのために、防音壁でつくられている音楽室が解放されている。沙良たちのほかにもいくつかのバンドと、管弦楽部がバラバラと使用していた。


「ねえー沙良、沙良がでるってことはさ、生徒会の人たち見に来る?」

「波折先輩と可織先輩は来るって言ってたよ。他の二人はわからないけど」

「そのお二方がくるなら! 大バンザイ!」

「……は?」


 ボーカルの北村が、ぐっとガッツポーズをして叫ぶ。沙良がぽかんとした顔でいれば、北村は嬉しそうににやにやとしながら沙良に迫ってきた。


「だって、可織様だろ……あの超絶美人お嬢様。可織様に俺の歌声が聞かれると思うと興奮する……!」

「……きもちわるっ」

「それから、冬廣先輩……! そう、冬廣先輩!」

「は? なに?」

「昨日さ、冬廣先輩メイド服着てたじゃん……めっちゃ可愛かったじゃん……俺惚れちゃった」

「……あ?」

「今までは抱かれたいって思ってたけど今は抱きたい、冬廣先輩抱きたい、超可愛い」

「……まじ勘弁」


 昨日のメイドカフェは、JSにホモを増やしたらしい。北村の言葉に他のメンバーも深く頷いているのをみて、沙良は口元をひきつらせる。


「みんなに触られてちょっと感じてたよね、冬廣先輩。あれめっちゃエロかったな〜」

「わかるわ〜、あれはなかなかにイイ」

「生徒会長抱くってロマンじゃね」

「俺も男イケそう」


「……」


 これから波折は全校生徒にそういった目で見られるのか……。沙良は大丈夫かな〜、と波折の心配をしたが、まあ当然のことだろうなと溜息をつくことしかできなかった。
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