18
俺の人生を決定づけたのは、家族を失った事件ではない。親戚のオジサンとの生活だった。
葬儀の日は、雨だった。喪服を着て、傘を差し、これからどう生きていけばいいのかと路頭に迷っていた俺に、オジサンは声をかけてきた。俺はオジサンのことを昔から知っていたから、疑うことなく彼に着いていった。それが――すべてだった。
『翼。いい名前だね、翼』
初めて犯されたときのことは、あまり覚えていない。ただ泣いていたことだけを覚えている。人並みに屈辱を覚え、そして痛みを感じ、俺はオジサンに犯されて泣いていたのだ。しかし、毎日のように犯され、時にはドラッグを使われ、いつしかオジサンに抱かれて感じるようになってしまったとき。オジサンは、俺に言う。
『飛ぶための羽も持っていないのに、君の名前は翼っていうんだね』
そう――その言葉が、俺のすべてになった。俺は飛ぶ羽を持っていない。空っぽの俺には、飛んでいきたい場所もなければ飛ぶために必要な力もない。オジサンの言葉はずっしりと俺の中にとどまって、いつまでも消えることはなかった。
翼という名前が嫌いだった。一生、翼など生えなくてもいいと思っていた。だから俺は、プライベートでも「セラ」と偽名を名乗り、誰にも「翼」と呼ばせることはなかった。
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