▼ quatorze(2)
簡単すぎる間抜けな返事をした俺に、白柳さんが困ったような笑顔を向ける。そして、そっとキスをしてきた。
キスだけでも、すごくドキドキする。キスのやり方が頭から吹っ飛んでしまうくらいに。
彼の頭を包み込むように後頭部に手を添えて、やわやわと彼の髪を撫でてみる。舌を撫で合うようにゆるく絡めて、お互いの呼吸を感じ合う。それだけなのに、頭は真っ白、とろけるように気持ちいい。ずっとこうしていたい……と思うのに、どんどん体は熱くなっていて物足りなくなってくる。
「あ……、ぁ……」
自分が昇りつめてゆくのがわかる。温かな波が体の中をゆっくりと昇っていき、それに合わせて俺の体がのけぞってゆく。
気持ちいい。こんなに気持ちいいキス、初めてだ。
「あ――……」
ふわ、と視界に白い火花が散るような。そのあとで、ちかちかと炭酸がはじけるような。温かく、静かな閃光に俺の体が貫かれる。
「あ……」
いまの……もしかして、俺、イッたのかな。いつもとは違う絶頂に、不思議な多幸感を感じる。体がガクガクするような気持ちよさじゃなくて、ふわっと飛ぶような柔らかい気持ちよさ。じわじわと全身に幸せがしみこんでいくような余韻。
俺、キスでいってしまった。
「し……しらやなぎさん……」
「ん……?」
「き、キス……もっと……いっぱいして……」
「……可愛い、セラ」
つい、彼に甘えてしまえば、彼は嬉しそうに笑った。けれど、俺はそんなことを言っておきながら、体も触って欲しくて仕方ない。たまらず腰を揺らしてしまって、もちろんそれは白柳さんに気付かれた。
白柳さんはニッと笑って、俺にキスをする。そして、キスをしたまま俺の服の中に手を入れてきた。下腹部を擦り合わせながら、腰や背中を手のひらでゆっくりと撫でられる。俺は彼の背に手を回して、ゆるく体を揺らしていた。もどかしい快楽がじわじわと迫ってくるなか、たっぷりとしたキスを続けていると、本当に、本当に幸せな気分になる。
「あ……、ぁん……あっ……ぁ……」
「は、……はぁ……」
服を脱がされたので、俺も白柳さんの服に手をかけた。白柳さんは俺が服を脱がすのを待っていられないのか、俺がごそごそしているのを無視して、俺の首元に吸い付いてくる。ふに、と柔らかい唇の感触を首筋に感じて、ついビクンッと震えてしまった。ああ、白柳さんの服、全然脱がせられない。
「ねえ、白柳さん、もっと……ゆっくり……」
「俺、余裕ねえんだよ」
「やだ、もっと、いちゃいちゃしたい、」
「……、あぁっ!?」
ガバッと白柳さんは起き上がって、びっくりしたような顔をして俺を見下ろす。身体に多い被さっていた白柳さんの熱がふっと消えてしまったので、俺が「離れないで」と視線で訴えたが、白柳さんにそんな俺の気持ちは伝わっていないようだ。
急に、どうして離れるというのか。
「お、おまえもそんなこと言うんだな……」
「はっ……はあっ……? い、言うよ……好きなんだから……」
「……、」
自分で言ったことがじわじわ恥ずかしくなってきて、「何がおかしいんだ」と思っているフリをして、俺は白柳さんをじっと睨む。そんな驚いたようなリアクションをしないでくれ、頼むから。恥ずかしくなってくるから、本当に。
白柳さんはなんとも言い難い表情を浮かべて、するりと自分の服を脱いだ。俺が半端に脱がしていた簡単に脱げて、ぽいっとベッドの下に捨てられる。
「セラ、こっち……」
「ん、」
白柳さんは俺の腕を引く。ぐいっとひっぱられるように起こされて、俺は白柳さんと向かい合うようにして座った。
わあ、これ……なんかこっぱずかしいような。
股間をぐいっと密着させるようにして、全身をぴたりとくっつけ合い、抱きしめ合うようにして再び唇を合わせた。押し倒されているときよりも動きやすくて、俺は自然と身体を揺らしてしまう。全身が擦れ合うと、肌がゾワゾワするような……柔らかい快楽に包まれて、たまらなく気持ちいい。
「んっ……、ん……んん……ん、……」
ギ、ギ、……とベッドが軋む音と同時に、身体が揺れる。じんじんとお腹の中が熱くなってきて、イけそうだけどイけない。この状態が延々と続いて欲しい……そんな風に思ってしまうような、本当に丁度いい、ゆるりとした気持ちよさ。
「んんっ!」
ぐに、とお尻を揉まれたのを感じて、お腹の中がビクビクと震える。幸せいっぱいの気分から、ぐるんとエッチな気分に切り替わる感覚。白柳さんは大きな手でグニグニとお尻を揉んできて、そうされるとお尻の穴がちょっと刺激されて、ソコを触って欲しくなってしまう。
「はぁ、……し、白柳、さん……」
「んん……?」
「なか、……さわって……」
「なんだよ、おまえもせっかちじゃねえか」
「うう、だって……」
「ふん、まだ時間はいくらでもあるしな、何回でもセラのこと気持ちよくさせてやるよ」
カパ、とローションのフタが開く音がする。
「……一日中、エッチするつもり……?」
「……悪いかよ」
「ううん……最高、うれしい」
ちゅ、と白柳さんにキスをすると、白柳さんはまたなんとも言い難い表情を浮かべた。もしかしたらこの表情は、照れている表情なのかもしれない。
白柳さんはローションを手のひらでねちねちとこねて、温めてから俺のお尻を触った。おかげで冷たくない。ぬる……とした感触がお尻に広がって、穴がヒクヒクとする。
「ん……」
白柳さんの指が、お尻の割れ目をなぞった。ぬり、ぬり、と穴を擦るように往復されて、腰がヒクヒク動いてしまう。
「じ、焦らさないで……」
「焦らしたほうが気持ちいいだろ?」
「余裕ないって言ったくせにっ……焦らす余裕はあるのかっ」
「ん〜、いや、焦らされているおまえが可愛くてさ」
「なっ」
白柳さんに優しくいじわるされると感じてしまうのは事実なわけで。焦らされて、焦らされて、腰を揺らしながらおねだりしていると、どんどん身体が熱くなってくる。そんなことあるわけないのに、なかが愛液でジワッと濡れてくるような、そんな錯覚に陥ってしまう。
くちゅ、くちゅ……とローションが音を立てて、頭の中を蕩けさせる。はやく、はやく、白柳の指でなかをかき回してほしいのに……白柳さんはいじわるをして、いれてくれない。
「白柳さん、いれて……はやく、いれて……」
「ん〜? ふふ、」
「白柳さん……」
くい、と顎を掴まれて、真っ正面から見つめられた。焦らされて、気持ちよくて、ぐずぐずになった顔を見られるのが恥ずかしい。白柳さんは嬉しそうな、たまらないような、そんな表情を浮かべながら、かぷ、と俺にキスをしてきた。
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