「ねえ、聞いて。白百合。私、神様に結婚を迫られたわ」



嬉々として、少女が言う。小さな祠の前で眠そうに丸くなっていた白百合は、鬱陶しげに片目を開けて、視線を少女に向けた。

視界に映るのは、頬を赤く染めて純粋に微笑む少女。恋をする乙女のような、無垢に「見える」少女だ。



「ほお? 神と結婚してどうするつもりだ?」

「子供を産むわ! 玉桂さまと永遠になるの!」

「……神の子を産む? 正気か、そなたは。神の子を産むということはな、自らも神にならなくてはいけないんだぞ。そうなれば、そなたはもう二度と、人間には戻れない」



白百合は体を起こし、じろっと少女を睨む。眩しい少女の瞳に、虫酸が走る。



「それは本望よ! 人間の世界なんて大嫌い! だってこの世界は私を嫌っているもの。私もこの世界を嫌いよ、呪ってやるわ!」



白百合の瞳が、すうっと細められる。ぐっと少女に顔を近づけると、白百合は冷たい声で、ささやいた。



「……そうか、この世界が嫌いか。それなら貴様に神になる資格などない。神になりたいなら、この世界を愛するがいい――咲耶」

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