「……はあ、」



 織が去っていくと、女はため息をつく。

 どうせ呪いが解けるなんてことはない。もう十年以上も続く呪いを、あの若い青年がどうやって解くことができるのだろう。呉須の池のことを教えたのはいいものの、そんなに信用はしていない。

 これからも変わらず、この日々が続いていくのだ。罪の意識に囚われ、気が狂うような日々が毎日。



「……?」



 かた、と玄関から音がする、織たちが何かを忘れていったのだろうか。そう思って玄関を覗いた女は――悲鳴をあげる。



「はっ……入ってくるな! くるな、くるな!」



 わずか開いた、玄関。隙間から覗くのは――小さな、目。子どもの瞳だった。
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