十一

「まったく、狐使いの荒い人間だ。まあ、可愛い織のためだ、任せておけ」



 吾亦紅に襲われた日から、織は屋敷の外に出ない生活を送っていた。詠の結界がはってある屋敷から外に出てしまえば、また吾亦紅が襲ってくるかもしれないからだ。

 しかし、ずっと屋敷の中にこもっているわけにもいかない。もう、織は以前のように外の世界から逃げたりはしていないからだ。せっかく、少しずつ周りの人々と触れ合っていこうしているところで、また閉じこもってしまったのではどうしようもないだろう。

 そこで、白百合はなぜ吾亦紅が織を襲ってくるのか調べようと提案してきた。それさえ解決すれば、再び織は外の世界に出ることができるからだ。



「でも、調べるといっても、どうやって? 吾亦紅に会うのは危険だぞ」

「もちろん、自らが危険な目にあうようなことはしない。妾は自己犠牲を払ってまで人助けなどしないからな。ふん、そうだなー―櫨について、調べようと思う」

「……櫨?」



 白百合によれば――なんと櫨という鬼は、咲耶と親しかったらしい。咲耶の口から、何度か櫨の名を聞いたことがあるというのだ。その二人と吾亦紅につながりがあるとは限らないが、そこをつついてみる価値はあるだろう。



「……でも、……ただ櫨について調べるだけと言っても、おまえ一人だと危険だ。誰かと一緒に行動したほうがいいんじゃないのか」

「……千歳とかか? しかし……千歳は暦の傍を離れてはならぬだろうし……」



「――わ、私がいきます!」



 鈴懸は、織のそばにいなくてはいけないため、白百合に着いていくことはできない。吾亦紅の周囲を調べるということで鈴懸が白百合の心配をすれば――一人、名乗りをあげた者が。



「白百合さまを危険な目にはあわせたくありません……!」



 ――詠である。詠が、白百合についていくと言ったのだ。

 
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