「うわー、すごいね、ゆうくん」



 東京に雪が降ったのは、いつぶりだろう。その日は、東京に珍しく雪が降ったということで、騒がしい一日となった。まず、電車が一部止まるし、身体中雪まみれになるし、みんな慣れない雪ではしゃいでいるし。俺も、まあ雪はすごいと思ったけれど、学校から帰る頃にはくたくたになっていた。もうしばらく、雪はいいかな、と思っていた。

 でも。

 窓の外をみて目をきらきらと輝かせている葉を見ると、雪も悪くないなんて思う。白い肌と雪景色は、ハッとするくらいにお似合いだった。



「うちのクラスね、昼休みに雪合戦したよ」

「元気だな〜」

「ゆうくんは何もしてない?」

「涙と雪景色の写真撮りにふらふらしてた」

「また涙くんの話!」



 葉と一緒に、俺の部屋で今日の話をする。外から帰ってきたばかりか、葉の頬のあたりが冷たさで紅くなっているのが、ちょっと可愛かった。

――中学に入学して、冬を迎える。それでも何も変わらず彼女と付き合っていられるのを、幸せだなあとしみじみ思った。セーラー服を着た葉と雪景色、なんて、人生で初めて見る。本当に、可愛いなあって思う。



「葉」

「なに、ゆうくん……、ん」



 窓辺で笑う彼女に、衝動的に、唇を重ねる。まだ、幼い俺達は、キスですらもぎこちない。手を繋ぐのでも恥ずかしいし、キスなんてもういっぱいいっぱい。もうちょっとスマートにキスができるのはいつだろう、キスをするたびに俺は考えてしまう。



「あったかい飲み物もってこようか」

「えっ、う、うん……! ありがとう」



 やっぱり、キスをしたら今日も頭の中がパンクしそうになって。俺は、逃げるようにして立ち上がり、部屋を出た。



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