「……」
目が冴えている。
グラエムは酒を飲むと眠れなくなる体質であった。つい先ほどラズワードと騒いでいたのもあるのだろう。
全然眠れない。
「……まいったなあ……」
明日は早い。早く眠りにつかないと、明日が大変だ。
そう思ったが、体はいうことを聞かない。
もはやこのまま起きていようか。朝になったらラズワードに体力を回復してもらえばいい。
そう思って、グラエムはチラリとラズワードの様子を見る。
「……もう寝たかー?」
呼びかけても反応はない。静かな寝息も聞こえてくる。たぶん、寝ている。
少し、寝顔を覗いてやりたい、そう思ってグラエムは布団をめくった。昔もずっとラズワードは隙がないというか、気の抜けたような顔をあまり見ることができなかった。今がチャンスだとばかりに、グラエムはニヤニヤと笑いながらラズワードの顔を覗き込む。
「……なんだよ」
その、ラズワードの顔を見て、グラエムはふ、と微笑んだ。
「……可愛い寝顔してやんの。……やっぱまだおまえお子さまじゃねえか」
もう一度布団をかけてやって。その上からラズワードをなでてやる。
「……おやすみ」
そして、無駄だとわかりながらも、目を閉じた。
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