8

「……」


 目が冴えている。

 グラエムは酒を飲むと眠れなくなる体質であった。つい先ほどラズワードと騒いでいたのもあるのだろう。

 全然眠れない。


「……まいったなあ……」


 明日は早い。早く眠りにつかないと、明日が大変だ。

 そう思ったが、体はいうことを聞かない。
 
 もはやこのまま起きていようか。朝になったらラズワードに体力を回復してもらえばいい。

 そう思って、グラエムはチラリとラズワードの様子を見る。


「……もう寝たかー?」


 呼びかけても反応はない。静かな寝息も聞こえてくる。たぶん、寝ている。

 少し、寝顔を覗いてやりたい、そう思ってグラエムは布団をめくった。昔もずっとラズワードは隙がないというか、気の抜けたような顔をあまり見ることができなかった。今がチャンスだとばかりに、グラエムはニヤニヤと笑いながらラズワードの顔を覗き込む。


「……なんだよ」


 その、ラズワードの顔を見て、グラエムはふ、と微笑んだ。


「……可愛い寝顔してやんの。……やっぱまだおまえお子さまじゃねえか」


 もう一度布団をかけてやって。その上からラズワードをなでてやる。


「……おやすみ」


 そして、無駄だとわかりながらも、目を閉じた。
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