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「『レーメン』は夜明けにしか姿を現しません」



 ヒトの住む小さな村、ネブリナ。今日の獲物「レーメン」を狩るために、ラズワードはここを訪れていた。レーメンは魔術を無効化する、不思議な超音波を発するコウモリだという。どこかどんよりとしたこの村に、そのレーメンは度々現れるらしいのだが、そのレーメンの姿が全く見当たらないと村人に尋ねて見ればこの返答である。

 ハルがあまり容姿によって目立つことがないようにと地味なローブを貸してくれたが、面と向かって人と話すとなると流石に顔を隠せない。しかしその情報を教えてくれた人はじろじろとラズワードのことを見ていたが、幸いにもそれで事は済んだ。普通のヒトは、天使や悪魔などを見たことはないので、ラズワードが天使であると、ましてや被差別種族であることなどは知らない。おそらくこの情報は信ぴょう性の高いものだ。



(まいったな……)



 夜明けまでこの村で張るしかない。ラズワードはため息をついて、通信機をとりだした(ヒトの携帯電話を真似て神族が作ったものらしい)。ハルの番号を画面に表示させたところで、ラズワードはなぜか、ボタンを押すのを躊躇する。



「……」



 そういえば、ハルとこういった形で連絡をとるのは初めてだ。多分緊張しているのだと、ラズワードは自分の中で結論づける。実際に、最初の言葉はなんて言えばいいのだろう、とか、いつもどおりに話せばいいのだろうか、とかそんなことで頭はいっぱいだった。

 しかし、おそらく本当の原因は別にあった。

 今朝のハルの様子がいつもに増しておかしかったからである。

 

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