「なあ、ラズ……俺、ノワールよりもラズのことを気持ちよくしてあげるから」
「はるっ、はるさま、やっ……あっ……ぁあッ!」
「朝も昼も夜も、一日中、ずっと、ラズのこと気持ちよくさせ続けてあげるから」
「ぁあっ! あッ! あぁっ……だめっ、またっ……イクッ――!!」
「狂っちゃうくらい、イかせてあげるから、」
「やっ、いやっ、イク、ッ……イクッ、――っ……ごめんなさっ……イクッ――!!」
「俺のところに、戻ってきてよ、ラズ……」
ぷしゃ、とラズワードが潮を吹くと、ハルが身体を起こす。ラズワードの潮を浴びながら、ハルは顔を歪めながら笑った。
「なあ、ラズ……頷いて」
「はあ……あ、……あ、……」
「ラズ、聞いてる? ……ああ、もっと気持ちよくなりたい?」
「……、はぁっ、……は、……あ、……い、や……」
ラズワードは朦朧としながら視線を漂わせる。ハルが背中を見せる。もう、これ以上はやめてほしい――そんなラズワードの思いは、あっさりと打ち砕かれる。ハルの手には、ロープが握られていた。これ以上、身体を触られたくなかったラズワードは、首をゆるゆると振って拒否を意思を示す。しかし、それをハルが受け取ってくれるはずがない。
「ひ、……うっ……」
ロープが身体に巻き付けられてゆく。腕は、頭上に手錠で拘束されたまま。脚は大きく開脚させられて、ベッドに固定された。ギッ、ギッ、と締め付けられると、ゾクゾクとしてしまって勝手に腰が浮いてしまう。
「はる、さま、なに……する、んですか……」
「ラズが気持ちいいこと好きだっていうから、気持ちよくしてあげようと思って」
「あ……」
ラズワードの身体にロープを巻き終えると、ハルが何かを大量にベッドの上に置いた。バイブレーターだった。大量のバイブレーターが、ラズワードの視界に映り込む。
「や、待って、ください、……いま、からだ、」
「身体が、敏感になっている?」
「はい、だから、……だから、それは、」
ハルはうんうんと頷きながら、ラズワードの身体に巻き付いたロープに、バイブレーターをねじ込んだ。身体の至るところにバイブレーターを取り付けられて、ラズワードはふるふると懇願するように首を振る。その状態でバイブレーターのスイッチを入れられるのが、恐ろしかった。
こんな風に快楽を与えられるのは、いやだ。無機質で冷たい快楽は、ただ苦しい。けれど、彼にこんなことをさせているのは紛れもなく自分。彼の行動を非難することなど、ラズワードにはできない。
「ひっ――」
秘部にぐっと圧迫感を感じる。太いバイブレーターの先端が、秘部に押しつけられていた。こんなに太いものをいれられたことがなかったので、ラズワードは怖くて「やだ、やだ、」とうわごとのように呟く。しかし、そんな懇願もむなしく、バイブレーターがズブ、とゆっくりなかに入ってきた。
「アッ、あ、ああ、アッ、あ、」
苦しい。圧迫感が襲い来る。肉壁はビクビクと震えて入り込んできたバイブレーターを飲み込むが、感じたこともない圧迫感がとにかく苦しい。確かに感じている快楽がわからなくなるくらいに、腹の中がパンパンになって、痛いのか気持ちいいのか苦しいのかわからない。
「こんなものも飲み込んで、それでイくんだから、やっぱりラズの身体はいやらしいね」
「ぃ、あ、……?」
イッてる、……?
ラズワードはぐらぐらとする視界の中、なんとか自らの下腹部に視線を遣った。へたりと下腹部の上に倒れ込んだラズワードのペニスから、だらだらと蜜があふれている。それでようやく、ラズワードは自分の身体が感じているのだとわかった。それくらいに、苦しかったのだ。
「うっ、あ――……」
ぐぐっ、と鈍痛が腹部に突き刺さる。バイブレーターが奥までねじこまれたのだ。入ってきてはいけないところに入っているのではないか、そう思うくらいに重い痛みがこみ上げてくる。
ラズワードはもがいたが、ハルは構わずバイブレーターを固定してしまった。ラズワードが「痛い」と言っても、ハルは「そうか〜」とのんきな声をあげるだけだ。
「ハルさま……やめて、ください……」
ハルはフッと口元を歪ませて笑う。
そして、構わずバイブレーターのスイッチを入れていった。
「アッ――!?」
ガクンッ、とラズワードの身体が震えた。ハルが次々にバイブレーターのスイッチを入れてゆく。
胸、脇、腹、太もも、そして身体の中。全身に取り付けられたバイブレーターが、ヴヴヴヴと低い音を鳴らし始めた。シーツに擦れただけで感じてしまう今のラズワードの身体に、バイブレーターの刺激はあまりに強すぎた。ラズワードは身体を弓反りにさせ、あっという間に絶頂してしまう。
「あぁぁああぁぁああッ――」
手錠の鎖がガシャガシャと激しく音をたてる。暴れるようにガクガクと震えるラズワードの身体は、無情にも手錠とロープで拘束されていて、ラズワードはどうすることもできない。暴力的に襲い来る快楽に、ただただ責め立てられた。
「あぁッあアぁああアア!!!!」
ハルはベッドの傍らの椅子にゆうゆうと腰掛けて、もがき苦しむラズワードを眺めていた。ラズワードが叫びの合間に「たすけて」と言っても、ハルにそれを聞き入れる様子はない。うっすらと笑みを浮かべながら、ただ見ているだけだった。
何度も、何度も、何度も何度もラズワードはイッた。気持ちいいという感覚はない。頭が真っ白になって、息が苦しくて、身体が熱くて、早く終わって欲しくて仕方がなかった。けれど時間の感覚もわからなかった。延々と、永遠に続くかのような苦しみは、地獄を思わせた。
「はは、また潮吹いた。可愛い身体だね、ラズ」
「アァ、あ、ゥあ、あア」
「……あれ、もう限界? 反応が薄くなってきたな……」
「ひ、……、……、……」
ラズワードは何度目かの絶頂を迎えると、声を上げなくなってしまった。身体は小刻みに震え、目はうつろになっている。
ハルは疲れたようにため息をつくと、椅子から立ち上がりラズワードの顔をのぞき込んだ。
「一旦休憩しようか? さっきも言っただろ、朝も昼も夜も、ずっと気持ちよくしてやるって」
ハルは涙で濡れたラズワードのまぶたにキスを落とす。ラズワードは、何も反応を見せなかった。意識を失ってしまっていた。
「俺のことしか考えられなくしてやるからね、ラズ」
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