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「……ろ」
ぼんやりと声が聞こえてくる。頭がはっきりしなくて、その音が何を意味しているのか、処理ができていない。
「起きろ、ラズワード」
「……!」
今度ははっきりと聞こえた声に、ラズワードは飛び起きた。あたりを見渡せば、すぐ隣にノワールがしゃがみこんでいる。
「いつまで寝ている。この時間にはもう準備を整えておけと言ってあるはずだ」
「……っ」
気付けば体を纏うものは何もない。昨夜の調教のあと、そのまま眠り込んでしまったらしい。体には毛布だけがかけてある。
「さっさと用意しろ。あまり待っている時間はない」
ノワールはそう言って離れたところにある椅子に座った。まだ彼は仮面とローブをつけている。それが、救いだったかもしれない。もしも今、彼が素顔であったなら、昨日のことを思い出してしまったかもしれないからだ。
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