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「ハル様。何かありましたか?」



 窓から夜空を眺めていたハルに話しかけてきたのは、通りかかったアザレアだ。アザレアは浮かない様子のハルの背中が気になって、話しかけてきたらしい。

 彼女の呼びかけにハルは振り向いて、ふっと笑う。



「……兄さんとかに聞いたら笑われそうだし……アザレアさんに吐き出したいって思ってたんです。ちょうどよかった」

「?」



 ハルの笑顔は、なんともいえない雰囲気があった。

 疲れている、とも違う。無理をしている、とも違う。言うなれば――悟ったような、笑顔。



「運命って、信じますか」



 アザレアは、ハルの言葉に息を呑む。

 そんな顔で、そんなことを言って。――ハルは、何を知ってしまったというのか。



「今なら、ラズが度々言っていたことがわかる。何者かにひっぱられるんだって、よく彼は言っていた。俺は、ラズを引っ張っていたものは「彼の運命」だと思うんです」



 ハルの頭の中に浮かぶのは、ルーレット盤。

 最後の勝負、どちらに落ちるかで勝敗が決まる、その勝負。黒という男が賭けた色と、自分が賭けた色。黒か、赤か。青い玉が選んだのは――



「そう――青は、黒へ堕ちていく」



 “Place your bet!”――黒の色だった。


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