「また、いらしてくださいね、ラズワードさん」
「――……」
――ああ、やってしまった。
レヴィの屋敷から出てラズワードはすぐに後悔をした。「革命」のリーダーになると約束してしまった。レヴィの前にいたときはノワールのことで頭がいっぱいになって冷静に考えられなかった。自分はレッドフォードの人間じゃないか。革命に参加なんてしたら、レッドフォードの顔に泥を塗ることになってしまう。
――ああ、本当に俺は、ノワール様のことになるとおかしくなる。
担保として貰った水魔術の魔導書を見つめ、ラズワードは途方にくれる。どんどんノワールのもとへ堕ちていっている、そんな気がする。一歩足を踏み外したら戻れない闇が、もう目の前に。いや――もう自分は、足を踏み外してしまっているのかもしれない。
ハルのもとへ戻るのに、なぜか抵抗がある。
ラズワードは重いためいきをついて、とぼとぼとレッドフォード邸へ道を歩き出した。
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