「え――」
――革命のリーダーにしてやる、そう言われてラズワードは戸惑ってしまった。この革命の目的は施設を潰すことであってその施設の長であるノワールを屠るのは、革命のリーダーとなるだろう。だから、この申し出を受ければノワールを殺すことができるかもしれない。
しかしそこでラズワードが戸惑ったのは、極めて単純な理由。この革命のリーダーというのが何をする存在なのかがわからなかったからだ。そもそも誰が参加するのかもわからないし、自分が誰かをまとめあげる才能がないこともわかっている。いくらノワールの首をとれるからといって、安安とリーダーを引き受けることは、できない。
「そう心配するな。実質、リーダーは俺になる。作戦をまとめるのも、指揮をとるもの俺だ。ラズワード、お前は、この革命の顔になってもらえればいい。強い力を持つ者がトップにたつことで、他のメンバーの士気もあがるだろう」
「え、……じゃあ、俺がするのは」
「まあ、戦闘員だな。先頭にたって敵をなぎ倒してくれればいい。それならできるだろ? おまえは戦うことが嫌いじゃないはずだ。なにせバガボンドにはいってたんだからな」
「……どこまで俺のことを調べ上げているんですか」
本当に、この男は恐ろしい。いつのまに自分の過去をあらったのだろう。もう、自分を革命に引き込もうと周りから固めてきているレヴィに、ラズワードは畏怖のようなものを覚えていた。末端からマクファーレンの長に上り詰めただけのことはある。この男は、とんでもない人間だ、ラズワードはそう感じていた。
「さあ――俺の仲間になるか、ラズワード。この勧誘は、愛しい彼の願いを叶える最後のチャンスだと思え」
「……、」
レヴィが、立ち上がる。そして、ラズワードに詰め寄った。ラズワードの心を見透かしたようにじっと瞳を見つめてくる。
「俺は……」
くらくら、する。レヴィの言葉を、頭が勝手に受け入れてしまいそうだ。
――ノワールを、愛しているか、って。そんな、馬鹿なことは、あるはずがないのに。その言葉に、違和感を覚えない、違和感を覚えないから受け入れたくない、そんな自分が恐ろしい。
この体は、ノワールのためにあるものだと思っている。強すぎる魔力を持って生まれたのも、水の天使としてワイルディング家に生まれたのも、ノワールと出逢ってしまったのも、すべてがこの世に生を受ける前から決まっていた運命なのだと思っていた。でも、それはただ、運命なのであって――愛しているのとは、違う……そう思いたい。だって、自分の隣には、ハルがいる。
「……俺は、ノワール様を愛している、わけじゃない。でも……ノワール様のことを、全てをかけてでもすくいたい――だから、俺は……」
――でも、逆らえない。運命に、逆らえない。誰を愛しているのか、そんなラズワードの意思など、関係ない。このレヴィという男との出逢いもまた、運命だ。
「俺は――戦います。貴方の仲間として、ノワール様を救うために」
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