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「どうしたの、ラズ」



 研究所から出てから、ラズワードは終始ぼんやりとしていた。イヴからハルのことを守り切ることができるのか、不安で不安で仕方なかったのだ。ラズワードがそんなことを考えているとも知らず、ハルはただその表情をみて心配の声をかけたのだが、ラズワードは考えていることを正直に言うことはできなかった。黙りこんで、うつむくだけ。



「……最近、何かあった?」

「い、……いえ」

「そっか……ならいいんだけど……。俺、今夜は街にいかなきゃいけないから、お留守番していてね」

「……わかりました」



 ハルは、自分が色々と隠していることに、きっと気付いている。それなのに言及してくることはない。それが心苦しくて、ラズワードはハルと目を合わせることにすら罪悪感を覚えてしまう。せめて……ハルのことを守るための強さに絶対的な自信が欲しいのに、それすらもあやふや。自分はハルの側にいる資格がないのではないか……考えて、考えて、ラズワードはふと思いつく。



「……あの、……レヴィ様に会いたいんですけど……だめですか?」

「え!? レヴィ? なんで!?」

「……あの方に、魔術の教えを請いたいんです」

「……俺はいいけど……うん、わかった連絡してみるね」



 イヴに対抗するための魔術を知っているレヴィのもとに行く。以前変なことをされてしまってはいるが、彼にはミオソティスがいるため自分に気を抱くことは絶対にない。レヴィについて色々と思うことはあるが、頼れる人物が彼しかいないのだ。

 ハルはラズワードの言葉に戸惑ったようだが、了承した。ラズワードの瞳に、迷いがなかったからかもしれない。レグルスのときに色々とあったレヴィに会わせることには正直抵抗はあっただろうが、彼に会わせることでラズワードに何か変化が起こるなら、とラズワードをレヴィのもとに行かせることにしたのだ。
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