今日から、悪魔狩りの任務の開始である。ラズワードが連れて行かれたのは、薄暗い荒野だった。まだ昼間のはずなのに空は黒く淀んでいて、大地は紅い。空気が冷たく、ぴりぴりとしている。いかにも、といった雰囲気に、思わずラズワードは唾を飲む。
「もとはこんな風景じゃなかったんだけどな。悪魔がでるようになって、土地も悪魔の出す邪気に侵されたみたいだ」
ここまでの移動手段は、神族の所有する巨大な竜型の聖獣。チーム全員が竜から降りると、ノワールがよしよしとその竜の頭を撫でていた。竜はノワールに頭を擦り寄せたかと思うとひと鳴きして姿を消してしまう。
「え、消えた!?」
「こういう任務のときだけ、俺が仮に契約しているんだ。俺が呼べばまたすぐに姿を現すよ」
「……聖獣とか魔獣との契約って、魔力削られると思うんですけど……大丈夫なんですか?」
「彼は戦闘用の聖獣じゃなくて力もそんなにないから、契約に使う魔力も少ない。そんなに影響はないよ」
「へえ。ノワール様が死ぬわけにはいきませんね。帰れなくなる」
「もっともだ」
ラズワードと話しているノワールに、ルージュが近寄ってくる。昨日ラズワードに渡されたものと同じ、心を読む機械を彼女も持っていた。「なにかあったらこれに」といった会話をして、簡単な打ち合わせを終えると彼女は自分のチームを引き連れて離れてゆく。
ノワールはルージュたちの姿が見えなくなると、仮面とローブを外した。ラズワードが少し驚いたような顔をしていれば、どうやらアベルもノワールの素顔を知っているため平気らしい。
「じゃあこっちも。いくぞ」
荷物を簡易基地に置いて、三人は目的地を目指し歩き始めた。
_189/270