「ああ、ラズワード。おはよう」
「……ッ」
玄関まで出て行って、ラズワードはどさりと荷物を落とす。その名前を口に出さなかった自分を褒めたい。
「ラズ、お迎え来ているから……この方に連れて行ってもらって」
玄関でハルが出迎えていたのは――ノワールだった。まさかの仮面なし、素顔である。突然に彼がいたものだからラズワードは驚いて心臓が飛び出てしまうかと思ったのだった。
(なんであんたが直接迎えに来てんだよ! そんなの下っ端にやらせろ!)
「いやあ、それにしてもお久しぶりです。レグルスのこと、いや、ほんと恥ずかしい」
「いえいえ、素晴らしい戦いっぷりでしたよ。かっこよかったです」
「みてたんですか!」
(いやいや思いっきりノワール様挨拶に来てただろ……ハル様その人が誰だか気付いてないのか)
色々と突っ込みどころ満載で、ラズワードの動揺は止まらない。落とした荷物を拾ってふらふらとハルの隣までいくと、ラズワードはじとっとノワールを睨みつける。しかしノワールはそんなラズワードの視線は気にしていないという風に、からっと笑って言ったのだった。
「じゃあ、ラズワードいこうか」
「……こ、この野郎!」
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