「ミオソティスがいなくなっちゃったのは寂しいですけど……なんか丸く収まったような気がしますね、ハル様」
「……ほんとだよ……どうなるのかと思った……」
「レヴィ様、ミオソティスの幼なじみだって言っているし、ミオソティスにも良くしてくれるといいんですけど……ハル様? どうしました、さっきからぼーっとして」
マグニフィカトが終わってレッドフォード邸に帰り、レグルスで敗北したことについてエセルバートからお叱りの言葉をうけ、それからずっとハルは考えごとをしているようにどこかぼんやりとしていた。ハルが敗北を気にするタイプの人間ではないと思っているラズワードは、そんな彼の様子を心配する。
「……いや、レヴィに……革命に加わらないか的なことを言われて」
「……え!?」
ハルがじっとラズワードをみつめる。実のところ、ハルはかなり揺れていた。ハルが唯一憎しみを抱く相手、ノワールを叩けるチャンスだ。ラズワードを奴隷制度にて虐げた神族をなんとか潰してやりたい。……が、ハルはレッドフォード家の人間。神族と親交をもつレッドフォード家から、革命に参加する者がでるなんてあっていいはずがない。
「れ、冷静に考えましょう、ハル様! 貴方はレッドフォード家の次男です、当主の継承権二位なんです、やめたほうがいいと思います! それに、危ないから!」
「だ、だよなあ……」
ラズワードは、自分もレヴィの革命に加わりたいと揺れていることを隠すべく、ハルをひきとめる。なんだか自分は卑怯だな、と思いつつもハルにその心の内を言い出すことができない。
……というのもきっと、革命に興味を持っている理由がノワールを倒すことができるから、であるから。自分がノワールのことに強い関心を抱いていることを、ハルに悟られたくなかったのだ。
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