「おはよう、ラズ」
カーテンから差し込む光でラズワードが目を覚ますと、同時に優しい声が聞こえてきた。ゆっくりと声が聞こえてきた方へ視線を動かすと、ハルが心配そうにみつめている。
「ハル……さま」
「今日は休んでいていいからね……体、休めて」
「だ、大丈夫ですよ……もう元気ですから」
「いいからいいから」
ノワールに抱かれたことが後ろめたくてついた嘘を、ハルが信じているのだと思うと罪悪感がこみ上げてくる。ぐっと胸が苦しくなってラズワードが黙っていると、ハルは笑ってラズワードの頭を撫でた。大きな手のひらから仄かな熱が伝ってきて、暖かい。ふわふわとしてきてラズワードが目を閉じると、唇に何かが触れた。
「……、」
すぐに離れていったそれは、ハルのキスだとすぐにわかった。心が割れるような音がする。でももどかしくて、切なくて、もっと彼とキスをしたいと。そんな、どうしようもなくラズワードの中に根付いたハルへの恋心が、ラズワードの手を動かした。離れていったハルの手を引いて、もう一度キスをせがむ。ハルは切羽詰まったようなラズワードの瞳に驚いてしまって、すぐに行動に移すことができなかった。ラズワードは逸る気持ちを抑えられず、自ら体を起こして唇をハルのそれに押し付ける。
「ハルさま……」
「ラズ……っ、」
「……一晩……一人で寝ただけで、なんか……もう、ずっとハル様から離れちゃうんじゃないかって、怖くて……」
ボフ、と音をたててベッドに押し倒された。噛みつかれるようにキスをされて、ラズワードは閉じ込めるようにハルを抱きしめた。服を脱がされてゆく感覚に、歓びを覚えた。
怖い。怖いの。このまま自分がどこかへ飛んでいってしまうのが、怖い。
「あっ……ん、ハルさま……!」
ハルの愛撫に安心感を覚えたいつもの熱、暖かさ。心の強張りを解かしてゆくようなそれに、体がとろとろに溶けてゆく。時折甘えるようにハルに手を伸ばしながら、快楽を深めてゆく。
「ラズ……大丈夫……ずっと、一緒にいるからね」
「はい……ハルさま、ハルさま……好き……」
「……俺も……愛してる」
「……っ、あ、……あ、あ」
お互いの全てをゆっくりと搾り取るような。そんな、ゆるやかなセックスだった。ギシ、ギシ、と静かに軋むベッドの音が、心臓の鼓動のようだった。触れ合ったところから染みてくる熱を堪能するように、ラズワードは目を閉じて感じていた。
「好き……」
ずっとハルのそばにいたい……そう願うと、切なくて泣きそうになる。大好きだった。ハルのことが、大好き。
祈るように、ラズワードは「好き」と何度も唇から零した。
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