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「浅葱……浅葱、でておいで、どうしたの?」

「なんでもありません、お母様、少し具合が悪いだけです」

「あら、それなら熱を計らなくちゃ……計ってあげるから、入ってもいい?」

「あっ、あの……大丈夫、おとなしくしていますから……お気遣いなく……」



 その日、少年は家の自室に引きこもっていた。心配した筑紫が声をかけてきたが、彼女には会いたくなかった。

 ……ここ最近、少年は筑紫と顔を合わせていない。少年が一方的に彼女を避けているのである。



「……」



――自分は、今まで何人殺した? 
殺さないでほしいと訴える人の命をどれだけ奪ってきた? この体にどれほどの返り血をあびたというのだろう。

 みられるわけにはいかない、触れるわけにはいかない。あんなに美しい人に、こんな人殺しの自分が――



「……僕は、」



 なぜ、こんなことをしているのだろう。なぜ人を殺さなければいけないのだろう。

 少年は部屋に散らばる大量の本を見渡す。最近は魔術書だけではなく、経営学、帝王学……さまざまなジャンルに渡る勉強をさせられている。この知識がなんの役にたつというのか、なぜ人殺しの技術を教え込まれているというのか。



「……」



 ふと、一冊の本が目に留まる。施設の頭「ノワール」について記されたもの。今まで「ノワール」の座についたものの記録などが事細かに載っている。



「……まさか、」



 今までのノワールたちの記録を見ていくうちに、少年はひとつの答えを導いてしまった。

――自分は、「ノワール」になるのだと
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