孫富

足下に浮かび上がる影の色で、今日は満月なのかと見上げるとそれはそれは綺麗な円で口を開けていた。ちりばめられた鏡の破片は、空気が冷えるといっそう輝きを増し、わずかな光を取り込んできらきらと踊る。今宵も寂しいくらいに静かな夜だと首元に手をやった。

「あ、まごへー」

目の前に表れた影は、呂律もさることながら足下もふらつかせながら、私の方に寄ってこようとしていた。危ないと拍子に丁度良く腕を差し出すと、どちらかが狙ったように私の胸に納まった。

「うわ、なんか伸びてねぇー?」

じっと見つめた後に何を言うのかと思えば、突飛した思考。香る匂いにそれもしょうがないと、ため息をわざと吹きかけて質問を滑らせる。しかし、作兵衛はそんなことはお構いなしに両腕を私の首に絡めて、私の首根っこに自分の額を擦りつける。ぱらぱら、作兵衛の結わえてない髪が揺らぎ、流れを整えるように梳きながら耳元で名を呼んでやり続ける。

「飲むなとは言わないけど、そろそろ適量を覚えろ」
「んー」
「そのうち痛い目みるぞ」
「はは、そりゃねぇや」

軽い笑い声、この様子は解っていない。
作兵衛はしっかりものであるがゆえに、ときおり見せる甘えたがりの仕草は反転して人を引き寄せる。特に今みたいに酒など口にしている場合など他意もなくそれとなる。こちらは心配してるというのに、解らせてやらなければならないらしい。
この時ほど顎を取ることが簡単な事はない。舌先だけで少し上唇を舐めて、どうだと見下ろす。

「んー、もっと」
「…私が言ったこと解ってないだろう」
「うるせぇー」

口が悪いのも彼の個性だろうが、少し直させないといけない。
しかし、とりあえず甘える体制にしかない作兵衛を、体で覚えさせる意味も込めて、溶かして満足させておくことが先決のようである。


7分以内に1RTされたら孫富で、抱きついて甘えるシーンを描きます。


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